CODE
CODE
解説記事

「速報・詳解 会社法改正動向」第2回会議 速報 坂本佳隆/佐賀洋之

2025/06/03坂本佳隆(弁護士)佐賀洋之(弁護士)アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 坂 本 佳 隆

弁護士 佐 賀 洋 之

 

1 第2回会議の実施

2025年5月21日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会(以下「本部会」という。)の第2回会議が開催され、同23日に議題、議事概要および部会資料等が法務省内の本部会のウェブサイト[1]において掲載されている。

本連載の第1回会議(速報)にて概説したとおり、本部会の第1回会議において、本部会で見直しを検討すべき事項の例が提示されている(当該事項に検討範囲が限定されるものではないことについては、第1回会議(速報)をご参照)ところ、第2回会議では、議題が「株式の発行の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討」と設定され、以下の3点が具体的検討事項として提示されている。

 

(表1)第2回会議における検討事項

No. 検討事項 概 要
1 株式の無償交付の対象範囲の見直し 従業員および子会社の取締役、上場会社以外の株式会社等を念頭に置いた対象範囲の見直し
2 株式交付制度の見直し 利用できる範囲の拡大や手続の簡素化
3 現物出資制度の見直し 検査役の調査を要しない範囲の拡大、関係者の不足額塡補責任の緩和

 

本稿では、第2回会議の「速報」版として、第2回会議の議事の概要を、公開された部会資料を踏まえて解説する。なお、第2回会議の議事録については、一定期間経過後に公開されることが想定されており、本部会での実際の議論状況については、「詳解」版において以下の各論点の詳細と併せて解説予定である。

 

2 株式の無償交付の対象範囲の見直し

⑴ 見直しの背景

2019(令和元)年の会社法改正(以下「令和元年改正」という。)によって、上場会社の取締役および執行役に対する株式の無償交付が可能となった(会社法202条の2)。

一方で、国内外の優秀な人材の獲得・維持、エンゲージメントの向上等の観点から、従業員および子会社の取締役等(以下「従業員等」という。)に対する株式付与の動きが広がりつつあるなかで、現行会社法では従業員等に対する株式の無償交付は許容されていないことから、実務上、金銭債権を従業員等に付与した上で、従業員等が当該金銭債権を現物出資財産として給付することにより、上場会社の株式の発行または自己株式の処分を受けるという取扱いが行われている。

今回の見直しは、上記の実務対応も踏まえ、従業員等に対する株式の無償交付を認める必要性があるとの立場に沿って検討されているものである。一方で、株式の無償交付を認めることによって従業員等(特に従業員)の賃金が削減されることがあってはならないという問題意識[2]も存在することから、制度の見直しにあたっては、かかる観点での検討が必要となる旨言及されている。

 

⑵ 見直しの内容

ア 必要手続

上記の背景を踏まえ、上場会社における従業員等に対する株式の無償交付に関する必要手続については、下表のA案、B案の2案が提示されている[3]

 

(表2)「部会資料2」株式の無償交付の対象範囲の見直し案(同資料3頁)

  内 容
A案 株主総会の決議を要件とせずに取締役会の決議のみで従業員等に対する株式の無償交付を可能にすることとした上で、有利発行規制に服するものとする。
B案 株主総会の決議により従業員等に対する株式の無償交付を可能にすることとした上で、有利発行規制に服しないものとする。

 

A案B案はいずれも、上記の背景は踏まえつつ、従業員等に対する株式の無償交付による上場会社の既存株主の利益保護をどのように図るかという観点での立案となっているものの、いずれの案かによって原則的な手続が変わってくることから、議論の方向性が注目される。

イ その他の論点

上記の必要手続のほかにも、部会資料では、①株式の無償交付の対象者となる「従業員等」の範囲について、発行会社の従業員以外に、(i)子会社の役員および従業員ならびに(ii)監査役および会計参与等を加えるか否か、②株式の無償交付を非上場会社も行えるようにするか、③株式の無償交付の開示の在り方、および、④株式の無償交付の計算の在り方についても検討事項として言及されており、これらの個別論点の詳細については、実際の議論状況と併せて詳解版において解説予定である。

 

3 株式交付制度の見直し

⑴ 見直しの背景

上記の株式の無償交付と同じく令和元年改正によって創設された、買収会社が被買収会社をその子会社とするために、被買収会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対し、対価として買収会社の株式を交付する、いわゆる株式交付(会社法2条32号の2)の制度については、制度を活用できる場面が限定されているとして、株式を対価とする買収をより円滑にする観点からの見直しの必要性が指摘されていた。

今回の見直しは、株式交付制度に関し、制度を利用することができる範囲を拡大することや、手続を簡素化することを志向して実施されるものである。

 

⑵ 見直しの内容

今回の見直しでは、大きく①株式交付の対象となる場面、②株式交付の対象となる会社の範囲、③株式交付の手続、および、④簡易株式交付の要件について検討対象となっており、各ポイントにおける検討事項は下表のとおり多岐にわたり、各事項の議論状況と合わせて詳解版で解説予定である。

 

(表3)「部会資料2」株式交付制度の見直し(同資料9頁~18頁)

Ⅰ.株式交付の対象となる場面
  1. ① 子会社の株式を追加取得する場合を株式交付の対象とするか否か
  2. ② 株式会社を会社法施行規則3条3項2号および3号に掲げる場合における子会社とする場合を株式交付の対象とするか否か
Ⅱ.株式交付の対象となる会社
  1. ① 持分会社を子会社とする場合を株式交付の対象とするか否か
  2. ② 外国会社を子会社とする場合を株式交付の対象とするか否か
Ⅲ.株式交付の手続
  1. ① 株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないことの是非
  2. ② 株式交付親会社における債権者保護手続を廃止することの是非
Ⅳ.簡易株式交付の要件
簡易株式交付(会社法816条の4第1項本文に規定する場合の株式交付をいう。)の要件を、「株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する株式交付親会社の株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額」の株式交付親会社の純資産額に対する割合が5分の1を超えない場合とすることの是非

 

4 現物出資制度の見直し

⑴ 見直しの背景

現物出資、すなわち金銭以外の財産の出資による募集株式の引受けに関しては、現行会社法上、原則として、募集事項の決定の後遅滞なく、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならないとされている(会社法207条1項)。かかる検査役による調査制度に関しては、スタートアップ企業における知的財産権等の現物出資の支障になっているとの指摘がなされている。

また、会社法上定められている現物出資財産にかかる不足額塡補責任については、募集事項の決定時に現物出資財産が適正に評価された場合であっても、募集株式の引受人が株主となった時までに現物出資財産が値下がりしたときは、不足額填補責任が発生し得るため、実務上のリスクとなっている旨の指摘がなされていた。

 

⑵ 見直しの内容

上記の背景を踏まえ、第2回会議では、検査役による調査制度および不足額塡補責任に関して、下表の見直しが討議対象とされている。

 

(表4)「部会資料2」現物出資制度の見直し(同資料18頁~23頁)

Ⅰ.検査役の調査の制度の見直し
検討事項①-1 検査役の調査が不要となる例外として、「取締役が199条2項の株主総会において、現物出資財産の評価の方法、評価額その他の同条1項3号の価額が相当である理由を説明した場合」を加える
検討事項①-2 公開会社において、検査役の調査を不要としようとする場合には、募集事項の決定は、株主総会の特別決議によらなければならないとする
検討事項② 会社法207条9項4号が定める現物出資財産の価額が相当であることについて証明する資格を有する者に「その他の当該現物出資財産の価額の評価に関し専門的知識を有する者」を加えることの是非
Ⅱ.不足額塡補責任の見直し
検討事項① 募集株式の引受人、取締役等および現物出資財産の証明者の不足額塡補責任の緩和
検討事項② 不足額塡補責任の範囲を「募集事項の決定の時における現物出資財産の価額が会社法199条1項3号の価額に著しく不足する場合における当該不足額」とすることの是非

 

5 次回以降の会議の見通し

第3回会議は6月25日開催予定であり、部会資料等が掲載され次第、同会議の「速報」を配信予定である。

以 上

 


[1]https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00014.html(2025年6月3日最終閲覧)

[2] 従業員に対する株式報酬の付与に関しては、いわゆる賃金の通貨払いの原則(労働基準法24条)の論点が存在し、この点は部会資料においても整理状況の確認が行われているが、紙幅の関係上本稿では割愛し、詳解版に譲ることとする。

[3] 併せて、非公開会社における募集事項の決定機関を現行の規律から変更しないことの是非についても検討対象として挙げられている。

 

 


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

 

執筆者

  • 坂本佳隆の画像

    弁護士

    坂本佳隆

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2012年~2013年東京大学法科大学院非常勤講師。2016年米国University of Southern California (LL.M.)終了。2016年~2017年米国ロサンゼルスのReed Smith法律事務所勤務。2017年~2019年に法務省民事局へ出向し、令和元年改正会社法の企画・立案を担当。2019年カリフォルニア州弁護士登録。主に、M&A及び会社法関連業務を扱っている。

  • 佐賀洋之の画像

    弁護士

    佐賀洋之

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2012年東京大学法学部卒業。2014年東京大学法科大学院修了。2015年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2021年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了。2022年ニューヨーク州弁護士登録。主に国内外のM&A、ベンチャー投資、一般企業法務、株主総会対応等のコーポレート案件を取り扱っている。

  • https://www.amt-law.com/

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

    <事務所概要> アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。 <連絡先> 〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング