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解説記事

「速報・詳解 会社法改正動向」第4回会議 速報 佐賀洋之/佐々木萌

2025/08/19佐賀洋之(弁護士)佐々木萌(弁護士) アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 佐 賀 洋 之

弁護士 佐々木   萌

 

1 第4回会議の開催

2025年7月30日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会(以下「本部会」という。)の第4回会議が開催され、同年8月4日に議題、議事概要および部会資料等が本部会のウェブサイト[1]において掲載されている。

第4回会議では、第3回会議に引き続き「株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討」が議題として設定され、大きくは以下の4点が具体的検討事項として提示されている(表1参照)。

 

(表1)第4回会議における検討事項

No. 検討事項 概要
1 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項 書面交付請求制度、書面による議決権の行使および株主総会の招集の電磁的方法による通知に関する見直し
2 「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し 事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度、書面決議制度およびキャッシュ・アウトの手続の見直し
3 株主提案権に関する規律の見直し 株主提案権の議決権数の要件、株主提案権の行使期限およびその他の事項の見直し
4 その他 調査者制度(会社法316条2項)および株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者の見直し等

 

本稿では、第4回会議の「速報」版として、第4回会議の議事の概要を、公開された「部会資料4」を踏まえて解説する[2]。また、第4回会議の議事録については、一定期間経過後に公開されることが想定されており、本部会での実際の議論状況については、「詳解」版において以下の各論点の詳細と併せて解説予定である。

2 「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し

⑴ 見直しの背景

株主総会は、株主が集まって「会議体」として開催されるものであって、当該「会議体」の場で審議し、決議されたものが株主総会の決議となるというのが、原則的な株主総会に関する考え方であるとされる。

もっとも、書面による株主総会決議(会社法319条1項)や、書面や電磁的方法による事前の議決権行使が認められている(会社法311条および312条)こと等、現行会社法下においても、株主総会の決議と「会議体」としての株主総会が常に結び付けられているわけではない。また、株主総会の実務としても、①上場会社では、事前の議決権行使によって、株主総会の開催前に事実上議案に関する大勢が決していることが多いという指摘があるほか、②非上場会社のうち比較的小規模な株式会社においては、相続等によって連絡を取ることが困難な株主がいる場合に、(その株主の有する議決権の割合がわずかであり、その他の株主は株主総会の目的である事項について賛成しているにもかかわらず)株主の同意を確認することができないがために、全株主の同意を要件とする書面決議(会社法319条1項)によることができず、株主総会を実開催せざるを得ないという指摘が存在する。

今回の見直しは、上記実態を踏まえ、「会議体」としての株主総会に関する規律の例外の在り方を検討するものである。

 

⑵ 見直しの内容

第4回会議では、「会議体」としての株主総会に関する規律の例外の在り方として、大きく①事前の議決権の行使により当該議案についての決議要件が充足される場合には、「会議体」としての株主総会を開催せずとも株主総会の決議があったものとみなす制度(以下「事前確定型決議制度」という。)、②書面決議制度および③キャッシュ・アウト手続が検討事項とされた(具体的な検討内容に関しては表2参照)。

 

(表2)「部会資料4」「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し(同資料1~15頁)

項目 検討事項の例
事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度 事前確定型決議制度の要件
事前確定型決議制度に関する手続
事前確定型決議制度に対する少数株主による株主総会の開催請求権の検討
株主総会における報告事項の扱いについて
事前確定型決議制度の対象となる会社の範囲
事前確定型決議以外の方法による見直しの検討
書面決議制度 書面決議制度において必要とされる株主の全員の同意の要件の緩和の是非
キャッシュ・アウトの手続[3] 特別支配株主の株式等売渡請求における「特別支配株主」となるために必要な議決権保有割合を10分の9から3分の2に引き下げることの是非
複数の株主の議決権を合算して議決権保有割合を算定することの是非

 

上記検討事項のうち、事前確定型決議制度の要件および手続に関する具体的な検討のための議論の叩き台として、概要以下の論点および方針が提示されている(表3参照)。

 

(表3)「部会資料4」事前確定型決議制度の要件および手続に関する規律(同資料5~12頁)

項目 論点(検討事項)
事前確定型決議制度の要件
  1. ⑴ 定款の定め:事前確定型決議制度を利用できることについての定款の定めの要否
  2. ⑵ 決議要件:事前の議決権行使により、(議決権を行使することのできる)すべての株主が出席した場合における決議要件を満たすことを要件とすることの要否
  3. ⑶ 事前確定型決議に対する株主同意:株主から事前確定型決議制度による決議の成立がみなされることへの明示的な同意を取得することの要否
事前確定型決議制度の手続
  1. ⑴ 招集決定・通知事項:取締役決定/取締役決議により事前確定型決議制度を利用することが決定され、株主に対して通知される(上記要件⑶の同意を取得する場合には、議決権行使書面に対応する記載欄の設定を想定)
  2. ⑵ 議案等に関する情報提供:書面または電磁的方法による議決権の行使がされる場合と同様の規律を想定
  3. ⑶ 質問、動議その他の審議に代替する措置:事前の株主からの質問に対する取締役等による回答制度といった質問の機会の提供の他、審議に代替する措置等の要否および必要とする場合の内容
  4. ⑷ 決議の開示:事前確定型決議が成立した場合は直ちにその旨を株主に通知する

 

また、事前確定型決議制度の要件および手続に関する規律以外にも、(i)一定の議決権を有する株主が事前確定型決議に対して反対した場合には事前確定型決議を利用することができず、「会議体」としての株主総会を開催しなければならないとする少数株主権を認めることの要否、(ii)株主総会における報告事項に関し、事前確定型決議制度の趣旨と同趣旨の規律を設けることの要否[4]、(iii)事前確定型決議制度の対象会社の範囲を上場会社に限定することの是非ならびに(iv)事前確定型決議制度以外の見直しとして、(ア)書面または電磁的記録による同意の意思表示により、多数決で株主総会の招集をすることなく株主総会の決議があったものとみなす制度の導入や、(イ)「会議体」としての株主総会の開催が必要であるとしつつ、株主総会の議事における瑕疵を株主総会の決議取消事由とならないとする等の規律が議論対象として挙げられている。

 

3 株主提案権に関する規律の見直し

⑴ 見直しの背景

現行法における取締役会設置会社の株主提案権は、特段定款における定めがない限り、①総株主の議決権の100分の1以上の議決権または②300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主であることを要件としている(会社法303条1項から3項までならびに305条1項および2項)。

この点、株主提案権の濫用防止および株主が多数存在する会社における株主提案権のハードルを下げる観点で上記の相対的・絶対的基準が設けられているものの、制度導入当時の投資単位と比較すると、現在の投資単位は引下げ傾向にある中、株式保有比率がきわめて低い株主であるにもかかわらず、300個以上という議決権数の要件を満たすことで株主提案権を行使することができてしまうという点で、株主提案権が濫用的に行使される懸念があると指摘されている。

 

⑵ 見直しの内容

上記背景を踏まえて、今回の見直しでは株主提案権の議決権数の要件、株主提案権の行使期限およびその他の事項が検討事項とされた(表4参照)。

 

(表4)「部会資料4」株主提案権に関する規律の見直し(同資料15~19頁[5]

項目 検討事項の例
株主提案権の議決権数の要件 株主提案権の行使要件として、300個以上という議決権数の引上げの是非
株式会社が定款の定めにより、株主提案権の行使要件のうち、議決権数の要件を引き上げることができる旨の規律を設けるか否か
株主提案権の行使期限 株主提案権の行使期限を現行法の規律(株主総会の日の8週間前まで)から前倒しするか否か

 

4 その他の事項の見直し

上記の他に、第4回部会の検討事項として、①会社法316条2項に規定する調査者制度および②株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者に関する事項の見直しが挙げられている(「部会資料4」19~23頁)。

株式会社の業務および財産の状況を調査する者を選任することができる調査者制度に関しては、裁判所が選任する会社法358条に規定する検査役の選任とは異なり、提案株主からの独立性・中立性が確保されていないことや、株式会社の機密情報が不必要に外部に流出し、または不正に利用されるなど、濫用のおそれがあること等から、見直しの必要性が指摘されている。

また、現行法上、株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者は、株式会社および総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主であるとされている(会社法306条1項)。取締役および執行役ならびに監査役(以下総称して「取締役等」という。)は、株主総会の決議の取消しの訴えを提起することができるものとされているが(会社法831条1項)、総会検査役の選任の申立権者ではないため、株主総会の決議の取消しの訴えが提起された場合における証拠を保全するために、当該訴えを提起することができる取締役等を総会検査役の選任の申立権者に加えるべきという指摘があり、この点についても検討されることとなっている。

 

5 次回以降の会議の見通し

第5回会議は2025年8月27日に開催される予定であり、部会資料等が掲載され次第、同会議の「速報」を配信予定である。

以 上

 


[1]https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00300.html(2025年8月12日最終閲覧)

[2] なお、表1の項目番号1「株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項」については、第3回会議の部会資料において解説されており、第4回会議の部会資料には該当項目に関する解説はなされていないことから、本稿における説明対象からも外している。第4回会議における当該項目に係る実際の議論状況に関しては、「詳解」版において解説予定である。

[3] キャッシュ・アウトの手続に関して、キャッシュ・アウトをしようとする買収者が総株主の議決権の3分の2以上10分の9未満の株式を取得した場合は、キャッシュ・アウトの帰すうが明らかであるにもかかわらず、特別支配株主の株式等売渡請求をすることができず、株式の併合の制度を用いるために株主総会を開催する必要があり、時間的・手続的コストが発生していることが見直しの背景事情として指摘されている。

[4] 第4回会議で提示されている規律は、「定款の定めにより、株主総会に報告すべき事項について、取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知し、かつ、行使期限までに、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき総株主の議決権の過半数を有する株主が同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす」である。

[5] 表には記載していない事項として、業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出を制限するか否かという事項が提示されているところ、株主提案の対象が業務執行事項か否かの判断が困難であることを理由として、慎重な検討が必要との補足がなされている。

 

執筆者

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    弁護士

    佐賀洋之

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2012年東京大学法学部卒業。2014年東京大学法科大学院修了。2015年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2021年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了。2022年ニューヨーク州弁護士登録。主に国内外のM&A、ベンチャー投資、一般企業法務、株主総会対応等のコーポレート案件を取り扱っている。

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    弁護士

    佐々木萌

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年中央大学法学部卒業。2021年東京大学法科大学院中退。2023年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、コーポレート、メインランドチャイナ法務を中心として、M&A、国際通商および経済安全保障に関する業務を広く取り扱う。

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    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

    <事務所概要>
    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。

    <連絡先>
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    * 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用