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解説記事

「速報・詳解 会社法改正動向」第5回会議 速報 野村直弘 /土屋沙裕喜

2025/09/08野村直弘(弁護士)土屋沙裕喜(弁護士) アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 野 村 直 弘

弁護士 土 屋 沙裕喜

 

1 第5回会議の開催

 2025年8月27日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第5回会議が開催された。法務省のウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]

 第5回会議の議題は、企業統治の在り方に関する規律の見直しに関する論点およびその他の論点の検討である。具体的には、①指名委員会等設置会社制度の見直し、②役員等の責任に関する規律の見直し、③有価証券報告書の総会前開示[2]の進展を踏まえた規律の見直しについて審議された。

 本稿では、上記ウェブサイトに掲載された「部会資料5」に沿って、これらの検討事項の概要を解説する。

 

2 指名委員会等設置会社制度の見直し

 指名委員会等設置会社制度の下では、指名委員会、監査委員会または報酬委員会の委員の過半数が社外取締役でなければならないが(会社法400条3項)、取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役でなければならないとはされていない。また、指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する議案の内容を決定する権限を有し(会社法404条1項)、取締役会が当該決定を覆すことはできない。

 このような規律は、この制度の前身である委員会等設置会社制度が創設された平成14年の時点で、社外取締役の適任者が少ないとの指摘を踏まえたものであった。しかし、現在の上場会社における社外取締役の選任状況からすると、当時の懸念はもはや当てはまらないとも考えられ、特に取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役である場合には、取締役会が指名委員会の決定を覆せないことの合理性は乏しいとの指摘がある。

 こうした状況を踏まえ、指名委員会の権限、監査委員会の権限等のほか、モニタリング・モデル[3]をより強く指向する方向性の見直しが検討事項とされた(表1参照)。

 

(表1)指名委員会等設置会社制度の見直しに関する検討事項

① 指名委員会の権限の見直し
  • 取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役である場合には、取締役の選任・解任に関する議案の内容に係る指名委員会の決定を取締役会決議により変更できる旨の規律を設けることの是非
② 監査委員会の権限等の見直し
  • 監査委員でない取締役による監査委員会の議事録の閲覧等を制限することの是非
  • 監査委員の選定・解職手続との関連で、株主総会決議により取締役を選任する際、各委員会の委員に選定されることが予定されている取締役について、その旨を株主総会参考書類の記載事項とすることの是非
  • 常勤の監査委員を選定しない場合の常勤の補助者の設置義務を設けることの是非
③ モニタリング・モデルをより強く指向する会社のための機関形態としての見直し
  • 取締役の過半数が社外取締役であることの義務付けの是非
  • 執行役が各委員会の委員を兼ねてはならないとすることの是非[4]

 

3 役員等の責任に関する規律の見直し

 役員等の株式会社に対する責任に関して、株主による責任追及等の訴え(株主代表訴訟。会社法847条1項、3項、5項等)が認められている一方で、非業務執行取締役等は責任限定契約を締結することができる(会社法427条1項)。

 この点について、企業経営者による適切なリスクテイクや積極的な成長戦略の実行を後押しする観点から、①業務執行取締役等である取締役にも責任限定契約の締結を認めるべきであるとの指摘や、②株主代表訴訟の要件を厳格化するべきであるとの指摘があり、これらの規律の見直しが検討事項とされた。

 「部会資料5」は、①について、これを認めると、これまで人材確保のためと説明されてきた責任限定契約制度の趣旨そのものを見直すことにもなるため、その適否は必要性と許容性の観点から検討することが考えられると述べている。また、②については、検討の前提として、近時の株主代表訴訟は減少傾向にあり、令和2年以降は新受件数が5年連続で50件を下回っていること(図1参照)のほか、平成17年の会社法制定および令和元年の会社法改正に係る法制審議会の部会でも株主代表訴訟の要件の制限や厳格化が検討されたが、立法化に至らなかったことを述べている。

 

(図1)

出典:「部会資料5」12頁

 

4 有価証券報告書の総会前開示の進展を踏まえた規律の見直し

 上場会社は、事業年度ごとに、有価証券報告書を当該事業年度経過後3か月以内に提出しなければならない(金融商品取引法24条1項)。また、上場会社の取締役は、所定の場合に、株主総会の日の3週間前の日または定時株主総会の招集通知を発した日のいずれか早い日から、計算書類および事業報告ならびに連結計算書類(以下「事業報告等」という。)の所定の事項に係る情報について継続して電子提供措置をとらなければならない(社債、株式等の振替に関する法律159条の2第1項、会社法325条の3第1項)。

 近時、企業と投資家との建設的な対話のさらなる充実や企業開示の質と適時性を高める観点から、有価証券報告書の総会前開示の有用性を指摘する声がある。もっとも、事業報告等および有価証券報告書の開示事項には重複が多い一方で、細目において多くの相違点があり(図2参照)、上場会社において多大な負担が生じているとの指摘もある。

 

(図2)事業報告等と有価証券報告書の開示事項の相違点

出典:「部会資料5」16頁

 

 こうした状況を踏まえ、規律の見直しの具体的な内容、必要性等が検討事項とされた(表2参照)。

 

(表2)有価証券報告書の総会前開示の進展を踏まえた規律の見直しの例

① 書面交付請求制度の見直し
  • 書面交付請求制度(会社法325条の5第1項・2項)の廃止や同制度に代わる措置を設けることの是非
② 開示事項の相違点についての対応
  • 事業報告等と有価証券報告書の開示事項に相違点(特に図2の「B」部分)があることによる上場会社の負担を解消すべく、(i)有価証券報告書の総会前開示をする場合に限り、事業報告等(当該「B」部分に含まれる事項)について開示を不要とするか、(ii)事業報告等または有価証券報告書の開示事項を見直し、当該「B」部分に含まれる事項がない状態とする(当該「B」部分に含まれる事項を、事業報告等の開示事項でないものとするか、図2の「A」部分に含まれる事項であるものとする。)という2つの方向性の是非
③ 有価証券報告書と事業報告等の一本化
  • 企業の開示実務の効率化のため、有価証券報告書の総会前開示をする会社は事業報告等を作成しなくてよいものとすることの是非
④ その他
  • 事業報告等に関する監査役の監査義務(会社法436条1項・2項、444条4項)を廃止することの是非
  • 単体決算開示(計算書類の作成・開示)を廃止することの是非
  • 会計監査の一元化をすることの是非

 

5 次回以降の会議の見通し

 第6回会議は2025年10月以降に開催される見込みである[5]

以 上

 


[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00301.html(2025年9月5日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)

[2] 有価証券報告書を定時株主総会の前に提出することをいう。

[3] 業務執行者に対する監督を中心とした取締役会を基本とする企業統治の構造をいう。

[4] 現行法上、執行役は、取締役を兼ねることができ(会社法402条6項)、指名委員会および報酬委員会の委員を兼ねることもできる。なお、監査委員会の委員を兼ねることはできない(会社法400条4項)。

[5] 法制審議会の9月開催予定表には、第6回会議の記載はない。
https://www.moj.go.jp/content/001445482.pdf

 

執筆者

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    弁護士

    野村直弘

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2013年東京大学法学部卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事・労務、紛争解決、サステナビリティ法務に関する業務を広く取り扱う。
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    弁護士

    土屋沙裕喜

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年東京大学法学部卒業。2022年東京大学法科大学院卒業。主にコーポレート案件を中心として、M&A、紛争解決、不正調査、人事・労務に関する業務を広く取り扱う。

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