Legal Operationsの実践(Season 2)の連載にあたって ~AI時代の法務の構造改革と法務パーソンの未来~ 鈴木卓/門永真紀
弁護士 鈴 木 卓
弁護士 門 永 真 紀
読者の皆様、「Legal Operationsの実践(Season 2)」と銘打って、本連載を再開します!
1 これまでの経緯
既存の読者の皆様にも、初めてご覧になる方にも、簡単にこれまでの経緯をご説明します。
筆者らは、2021年夏から、世界最大のLegal Operationsの業界団体であるCorporate Legal Operations Consortium(CLOC)のJapan Region(CLOC Japan)を主宰してまいりました。1年ほど議論を重ねる中で、その成果を広く共有し、日本の企業法務実務に貢献したいと考えるようになりました。
そこで、商事法務にご協力いただき、2022年7月から「Legal Operationsの実践」の連載を始めました。Legal Operationsの実践(Season 1)は、当初から1年間の予定で開始したため、2023年7月に終了しました。その後、連載の原稿を基に、2024年3月に書籍「Legal Operationsの実践」を発刊させていただきました。当時連載・書籍の執筆やインタビューにご協力いただいた皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。
書籍「Legal Operationsの実践」を発刊してから2年が経ちました。この間の大きな変化としては、やはりAIの発展です。書籍「Legal Operationsの実践」をまとめる過程でも、発刊してすぐに内容が陳腐化してしまう懸念もありました。事実、この2年間で発刊時に想定していたよりも大きな変化がありました。
筆者らは、書籍「Legal Operationsの実践」の発刊後に、「Legal Operationsの実践」読者勉強会を年に3-4回のペースで主催してまいりました。最近では、そこでの議論も、AI(やAI時代の法務パーソンの人材像及びその育成)が中心になっております。
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■『Legal Operationsの実践』読者勉強会 自社の「Legal Operationsの実践」を語ろう!
第1回レポート 自社の「Legal Operationsの実践」を語ろう! 編集部 NBL1290号(2025年5月15日号)
第2回レポート 自社の「Legal Operationsの実践」を語ろう! 宮田照三(株式会社JERA法務部) NBL1295号(2025年8月1日号)
第3回レポート――ビジネスインテリジェンスによるデータ収集・活用 編集部 NBL1313号(2026年5月1日号)
第4回レポート――AI時代の法務人材の育成と業務におけるAI活用 鈴木卓(三菱商事株式会社 法務部法務第3チームリーダー)/門永真紀(弁護士/アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業) NBL1313号(2026年5月1日号)
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2 連載再開という形について
この2年間の変化を見てくる中で、筆者らとしては、書籍「Legal Operationsの実践」のアップデートの必要性を感じつつも、変化の激しい/速い時代に、書籍という媒体の限界も感じておりました。
そこで、商事法務ともご相談し、Legal Operationsの実践(Season 1)と同様に、タイムリーに情報提供ができるオンライン媒体(CODE/旧商事法務ポータル)を活用させていただくことになりました。この場を通じて、最新のLegal Operations実務を共有する連載を「Legal Operationsの実践(Season 2)」と銘打って、再開します。
3 今回の連載の基本コンセプト
改めて、書籍「Legal Operationsの実践」の発刊から2年が経過し、特に生成AIの登場と実務導入の進展によって、法務の現場は大きく変化しました。法務部門では、従来の業務効率化・標準化・可視化に加え、AIを前提とした業務再設計、ガバナンス、ナレッジマネジメント、人材育成など、新たな論点が急速に重要性を増しています。
また、Legal Operationsの目的である法務機能の強化・高度化は、AI時代の到来により、法務部門だけの課題ではなく、全社的な経営課題となっています。そのため、Legal Operationsは法務部門だけでなく、全社的、さらには経営に資する戦略的な機能へと進化を遂げる必要があります。実際、CLOCにおいても、近年、Legal Operationsの戦略的な機能を重視する議論が広がっています。
本連載では、こうした変化を踏まえ、AI時代におけるLegal Operationsの現在地を多角的に捉えることを目的とします。
4 終わりに――AI時代の法務
詳細な議論は、次回以降の各連載に譲りますが(筆者らも、個別にテーマを設定してどこかで寄稿したいと思います)、ここで少しだけ、AI時代の法務についても触れておきたいと思います。
NDAを例に取ると、現在の生成AIでも、Playbook等の提供を含め、適切なプロンプトで指示すれば、契約相手方のひな型をWordの編集履歴付で変更したいわゆるRedlineを用意できます。これまでは、NDAであっても、最初から最後まで一応目を通し、変更すべき点がないか確認していたと思います。もっとも、これからは、生成AIが変更したポイントや漏れの有無をチェックし、Wordの編集履歴付で変更した箇所だけを確認すれば足りるようになると想定されます。これは、いわばAIと人間の協業であり、AIが8割完成させ、残りの2割を人間が埋めるような業務の変化を意味します。
この変化により、これからの法務パーソンは皆が管理職/マネージャーであるかのように、AIの成果物を確認し、足りない部分を補う能力を備える必要があります。法務パーソン1年目からこれを期待することは難しいとしても、これまでのように、数年目までは先輩や上司が自身の成果物を確認してくれる環境ではなくなるでしょう。たとえば、2年目からは先輩や上司がするかのように、AIの成果物を確認し、残り2割を埋める役割が期待されます。NDAのようなシンプルな契約であれば、1年目のうちから早期にポイントを吸収することも可能です。これは非常に大きな変化です。
法務部門としても(あるいは、企業としても)、これまでのように数年かけて(場合により10年経験して一人前として)育成する余裕はなくなります。今後は上記のようなスピード感で、AIを使いこなして高いパフォーマンスを発揮する人材(これを「AIネイティブな人材」と呼びます。)の育成に取り組んでいかなければなりません。新人・若手の育成プログラムの大幅な見直しが求められます。
上記のように書くと少し怖く感じるかもしれませんが、決して怖がる必要はありません。これまでは、法務は比較的経験が物をいう世界でしたし、これからも基本的にはそれ自体は大きく変わらないでしょう。しかし、AIを使いこなせば、どんどん活躍の場が広がる世界になったと言えます。その分早く経験を積み、さらに活躍の場を広げられます。AIを使いこなして、早期に高いパフォーマンスを発揮し、より難しい案件を任せてもらい、より多くの経験をして、さらなる成長につなげる、AIネイティブな人材となって、そういった好循環を生み出せるようになると良いと思います。
この連載では、法務やLegal Operationsの現場で、日々格闘している皆様に、それぞれなりの実践を披露していただく予定です。その中に、読者の皆様がAIネイティブな人材になるヒントが隠されているのではないかと期待しております。この連載が、これからのAI時代を切り開いていくための一助になれば幸いです。



