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解説記事

「速報・詳解 会社法改正動向」第3回会議 速報 野村直弘/浦地智暉

2025/07/09野村直弘(弁護士)浦地智暉(弁護士)アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 野 村 直 弘

弁護士 浦 地 智 暉

 

1 第3回会議の開催

 2025年6月25日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第3回会議が開催された。法務省のウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]

 第3回会議の議題は、株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討である。具体的には、①バーチャル株主総会およびバーチャル社債権者集会、②実質株主確認制度、③株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項について審議された。

 本稿では、上記ウェブサイトに掲載された「部会資料3」に沿って、これらの検討事項の概要を解説する。

 

2 バーチャル株主総会およびバーチャル社債権者集会

 現行法では、株主総会を招集するには「場所」を定める必要があり(会社法298条1項1号)、場所の定めのない株主総会(以下「バーチャルオンリー株主総会」という。)の実施は認められないと解されている。産業競争力強化法(以下「産競法」という。)66条は、一定の要件を満たし、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けた上場会社について、バーチャルオンリー株主総会を実施することができる旨の特例を定めるが、この特例によることができない場合でもバーチャルオンリー株主総会を実施するニーズがあるとの指摘がある。また、社債権者集会についても、その招集に当たって「場所」を定める必要があり(会社法719条1号)、産競法の規定のような特例はない。

 こうした状況を踏まえ、バーチャルオンリー株主総会について、実施要件、手続、株主総会決議取消しの訴えの特則、延期・続行等を含む規律の内容とその是非が検討事項とされたほか、バーチャル社債権者集会についても、株主総会との相違点を考慮しつつ、同様の規律を設けることの是非が検討事項とされた(表1を参照)。

 

表1 バーチャル株主総会およびバーチャル社債権者集会に関する検討事項

① 実施要件
  • 定款の定め
  • 株主総会の議事を適正かつ確実に行うために必要な措置として、通信障害対策に関する措置および即時性・双方向性の確保
  • デジタルデバイドの株主の利益を確保するための措置
② 実施する際の手続等
  • 招集の決定事項および招集の通知事項
  • 議事録の記載事項
  • 通信記録等の保存
③ 株主総会決議取消しの訴えの特則
  • 通信障害により株主総会の決議の方法が法令または定款に違反した場合には、株式会社の故意または重大な過失によって当該障害が生じたときに限り、株主総会の決議取消事由となる旨の規律を設けることの是非
④ 株主総会の延期または続行
  • 通信障害により株主総会の議事に著しい支障が生じる場合には当該株主総会の議長が当該株主総会の延期または続行を決定することができる旨の決議がある場合において、当該決議に基づく議長の決定があったときは、会社法298条・299条の規定は適用しない旨の規律を設けることの是非
⑤ その他の規律
  • 株主に対して、場所の定めのある株主総会の開催請求権を認めることの是非
⑥ 適用対象となる株式会社の範囲および株主総会の類型
  • 非上場会社を含むすべての株式会社を対象とすることの是非
  • ハイブリッド出席型バーチャル株主総会[2]およびハイブリッド参加型バーチャル株主総会[3]についても併せて規律することが望ましい事項
⑦ バーチャル社債権者集会
  • 実施要件
  • 実施する際の手続等
  • 社債権者集会の決議の不認可の特則
  • 社債権者集会の延期または続行

 

3 実質株主確認制度

 現行法上、金融商品取引法に基づく大量保有報告制度の適用対象となる場合を除き、株式会社や他の株主が、株主名簿に記載・記録された株主(名義株主)の背後に存在するいわゆる実質株主(株式の議決権行使にかかる指図権、処分権限等を有する者)を確認できる制度は存在しない。近年、株式会社が株主との間で建設的な対話を行う重要性が指摘されている一方で、実質株主を特定できないことが建設的な対話の支障となっているとの指摘もある。ここでは、株式の保管や管理を資産管理銀行、グローバルカストディアン等に委託し、自らは実質株主となる機関投資家の存在が特に念頭に置かれている(下図を参照)。また、株式会社の支配権争いの場面では、実質株主を確認する要請が強いとの指摘もある。

 

図 実質株主となる機関投資家の構造

出典:「部会資料3」17頁

 

 こうした状況を踏まえ、実質株主確認制度を創設することについて、制度の趣旨、制度の基本的な枠組み、その他の論点が検討事項とされた(表2を参照)。

 

表2 実質株主確認制度に関する検討事項

① 制度の趣旨
  • 株式会社と株主との間の建設的な対話の促進
  • 経営判断における重要な判断材料の収集による株主の共同の利益の保護
  • 株式会社の支配に関する重要な情報の把握および開示
② 制度の基本的な枠組み
  • 制度の適用対象となる株式会社の範囲
  • 実質株主の意義 ・株式会社が請求することができる実質株主に関する情報の範囲
  • 株式会社が実質株主を確認する仕組み

 <実効性を確保するための規律>
 ➾ 過料の制裁
 ➾ 議決権の行使の制限

③ その他の論点
  • 株主の請求権の有無
  • 実質株主の権利
  • 費用負担者
  • 国際私法上の整理
  • 実務運用の在り方

 

4 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項

 社会のデジタル化の進展を踏まえ、①書面交付請求制度、②書面による議決権の行使、③株主総会の招集の電磁的方法による通知について、それぞれの見直しが検討事項とされた(表3を参照)。これらの事項では、高齢者を中心にインターネットを利用することが困難な、いわゆるデジタルデバイドの株主の利益への配慮をどのように捉えるかという点が検討のポイントとなろう。

 

表3 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項の概要

A 書面交付請求制度
  • 株主総会資料の電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主は、株式会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができ、取締役は、電子提供措置をとる場合には、書面交付請求をした株主に対し、電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならないという書面交付請求制度(会社法325条の5第1項・2項)の見直し
  1. → 書面交付請求の行使比率は低水準にとどまっているとの評価もあり得る中で、同制度の廃止や同制度に代わる措置を設けることの是非
B 書面による議決権の行使
  • 株主の数が1,000人以上である場合には株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとすることを義務付ける旨の規律(会社法298条2項)の見直し
  1. → 電磁的方法による議決権の行使を原則的な取扱いとする制度に改めることの是非
C 株主総会の招集の電磁的方法による通知
  • 株主総会の招集を電磁的方法により通知するために株主の承諾を必要とする旨の規律(会社法299条2項・3項)の見直し
  1. → 株式会社が株主の個別の承諾を得ることは煩雑であり、実務上、電磁的方法による通知の普及が進んでいないが、その普及につながる仕組みに改めることの是非

 

5 次回以降の会議の見通し

 第4回会議は2025年7月30日に開催される予定であり、部会資料等が掲載され次第、同会議の「速報」を配信予定である。

以 上

 


[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00294.html(2025年7月8日最終閲覧)

[2] 物理的な場所を定めて株主総会を開催するとともに、株主総会の場所にいない株主もインターネット等の通信方法を用いて株主総会に出席することができる株主総会をいう。

[3] 物理的な場所における株主総会の開催に加え、株主総会の場所にいない株主が、株主総会に出席せずに、インターネット等の通信方法を用いて株主総会の議事を傍聴することができる株主総会をいう。

 


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

 

執筆者

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    弁護士

    野村直弘

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2013年東京大学法学部卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事・労務、紛争解決、サステナビリティ法務に関する業務を広く取り扱う。
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    弁護士

    浦地智暉

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年東京大学法学部卒業。2023年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事労務、紛争解決に関する業務を広く取り扱う。
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    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

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