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解説記事

「速報・詳解 会社法改正動向」第1回会議 速報 坂本佳隆/野村直弘

2025/06/03坂本佳隆(弁護士)野村直弘(弁護士)アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 坂 本 佳 隆

弁護士 野 村 直 弘

 

1 連載開始に当たって

本稿から、「速報・詳解 会社法改正動向」と題する連載を開始する。

本連載は、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会(以下「本部会」という。)で検討される会社法改正に関する動向をわかりやすく解説することを目的としている。法務省内の本部会のウェブサイト[1]では、会議の開催後すぐに議事の概要や資料が掲載され、少し時間をおいて議事録も公開される。そこで、本連載では、本部会の会議ごとに、開催後タイムリーに議事の概要を紹介する「速報」と、議事録の公開後、会議で検討された内容を詳しく解説する「詳解」の2種類の記事を配信していく。

初回となる本稿は、本部会第1回会議の「速報」に当たる。連載企画の準備の都合上、第1回会議の開催から少々時間が経ってしまい、また、第2回会議もすでに開催されている状況であるが、今後の「速報」は速やかに配信していく予定である。

また、第1回会議の「詳解」は、議事録の公開後、一定の時間をおいて配信する予定であるので、そちらもぜひご参照いただきたい。

さて、本稿では、連載の初回として、本部会の設置に至る経緯を簡単に説明しつつ、第1回会議の議事の概要を、公開された資料を踏まえて解説する。

 

2 本部会の設置に至る経緯

2025年2月10日開催の法制審議会総会第201回会議は、法務大臣から発せられた諮問第127号「近年における社会経済情勢の変化等に鑑み、株式の発行の在り方、株主総会の在り方、企業統治の在り方等に関する規律の見直しの要否を検討の上、当該規律の見直しを要する場合にはその要綱を示されたい。」(以下「本件諮問」という。)に関して、その調査審議のため本部会を設置することを決定した[2]

この背景として、会社法は、2005(平成17)年に制定され、2014(平成26)年と2019(令和元)年に実質的な改正がされたが、2019年の改正から約5年が経過し、社会経済情勢の変化等に伴い、様々な検討課題が指摘されているという事情がある。

具体的には、政府の「規制改革実施計画」(2024年6月21日)[3]および「規制改革推進に関する中間答申」(同年12月25日)[4]では、従業員等に対する株式の無償交付、株式対価M&Aの活性化、バーチャルオンリー株主総会等に関する会社法改正の検討が指摘され、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」(同年6月21日)[5]でも、現物出資規制の緩和等の検討、指名委員会等設置会社制度の運用実態の検証と改善検討等が指摘された。

また、公益社団法人商事法務研究会の下で2024年9月から開催された会社法制研究会[6]は、見直しを検討すべき会社法のテーマについて幅広く意見を聴取して論点を整理し、2025年2月に「会社法制研究会報告書」[7]を公表した。

経済産業省の下で2024年9月から開催された「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」[8]も、日本企業の「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス改革の進め方や会社法改正の方向性等を検討し、2025年1月17日に「会社法の改正に関する報告書」[9]を公表した。

こうして、政府方針やそれを背景とする研究会での議論も踏まえて、新たに設置された本部会で、会社法の改正に向けた具体的な調査審議が開始されることとなった。

 

3 第1回会議の概要

⑴ 議事の概要

本部会の第1回会議は、2025年4月23日に開催された[10]

まず、事務当局から本部会の設置について説明がされた後、神作裕之委員(学習院大学教授)が部会長、藤田友敬委員(東京大学教授)が部会長代理にそれぞれ指名された。

そして、部会資料や参考資料について説明がされた後、フリーディスカッションの形式により、本部会での検討事項に関する意見交換が行われた。

 

⑵ 部会資料の概要

公開された「部会資料1」は、本件諮問に沿って、本部会で見直しを検討するべき事項の例を、①株式の発行の在り方、②株主総会の在り方、③企業統治の在り方に関する規律に分けて整理している(表1参照)。もっとも、これらの事項以外の事項について見直しの要否を検討する可能性も排除されていない。

 

(表1)「部会資料1」記載の検討事項の例

項 目 検 討 事 項 の 例
株式の発行の在り方 株式の無償交付
  • 上場会社以外の株式会社、従業員および子会社の取締役等を念頭に置いた対象範囲の見直し
株式交付制度
  • 利用できる範囲の拡大や手続の簡素化
現物出資制度
  • 検査役の調査を要しない範囲の拡大、関係者の不足額塡補責任の緩和
株主総会
の在り方
バーチャル株主総会制度
  • 会社法への規律の新設、要件や株主総会決議取消しの訴えの特則等
実質株主確認制度
  • 株式会社がいわゆる実質株主(株主名簿に記載・記録されている株主に対して議決権の行使等について指図をすることができる者)を確認するための制度の新設、制度趣旨や制度の実効性を確保するための規律等
その他
  • 一定の場合には会議体としての株主総会を開催しなくとも株主総会の決議があったものとする制度の導入
  • 株主提案権の議決権数の要件の見直し
企業統治
の在り方
指名委員会等設置会社制度
  • 指名委員会、監査委員会および報酬委員会の権限等の見直し
その他
  • 業務執行取締役等である取締役との責任限定契約の締結を可能とする規律

 

⑶ 参考資料の概要

公開された3つの参考資料のうち、「参考資料1」は、上記2で述べた「会社法制研究会報告書」である。同報告書では、上記の「部会資料1」記載の検討事項はいずれも記載されているが、ほかにも言及されている事項があり(表2参照)、今後これらが本部会で検討されるかについても注目される。

 

(表2)「部会資料1」記載の検討事項以外で「会社法制研究会報告書」に記載された主な事項

  • 株主総会の書面決議(会社法319条1項)の要件の緩和
  • キャッシュ・アウトに関して、特別支配株主(会社法179条1項)の要件の緩和
  • 株主総会の検査役の選任に係る申立権者への取締役および監査役の追加
  • 会社法316条2項に規定する調査者制度の見直し
  • 株主総会資料の電子提供制度における書面交付請求制度の見直し
  • 株主代表訴訟の要件の厳格化
  • 剰余金の配当等に関する業務執行者等の責任(会社法462条1項)の緩和

 

「参考資料2」は、経済産業省の「会社法の改正に関する論点について」と題する資料であり、本件諮問に係る論点以外にも改正の必要性が指摘されている論点があるとして、上記2で述べた「会社法の改正に関する報告書」を添付しつつ、複数の論点を挙げている。

「参考資料3」は、弁護士の委員・幹事による「追加検討依頼事項」と題する資料であり、「部会資料1」記載の検討事項以外で、本部会で検討するべき事項が8項目提案されている。

このように、提示されている検討事項は多岐にわたり、審議する論点の選定も必要になるものと見込まれる。

 

4 次回以降の会議の見通し

第2回会議は、2025年5月21日に開催された。同会議の「速報」も近日中に配信予定である。

以 上

 


[1]https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00014.html(2025年5月29日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)

[2]https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500044_00005.html

[3]https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/program/240621/01_program.pdf

[4]https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/opinion/241225.pdf

[5]https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2024.pdf

[6] 座長:神作裕之・学習院大学教授、座長代理:藤田友敬・東京大学教授。2024年9月から2025年2月までに計6回開催された。

https://www.shojihomu.or.jp/list/kaishahoseiken

[7]https://www.shojihomu.or.jp/public/library/3276/report0702.pdf

[8] 座長:神田秀樹・東京大学名誉教授。2024年9月から2025年4月までに計8回開催され、同月30日に取りまとめが公表された。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/earning_power/index.html

[9]https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/earning_power/pdf/20250117_2.pdf

[10]https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00287.html

 


* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

 

執筆者

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    弁護士

    坂本佳隆

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2012年~2013年東京大学法科大学院非常勤講師。2016年米国University of Southern California (LL.M.)終了。2016年~2017年米国ロサンゼルスのReed Smith法律事務所勤務。2017年~2019年に法務省民事局へ出向し、令和元年改正会社法の企画・立案を担当。2019年カリフォルニア州弁護士登録。主に、M&A及び会社法関連業務を扱っている。

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    弁護士

    野村直弘

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2013年東京大学法学部卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事・労務、紛争解決、サステナビリティ法務に関する業務を広く取り扱う。
  • https://www.amt-law.com/

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

    <事務所概要> アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。 <連絡先> 〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング