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解説記事

「速報・詳解 会社法改正動向」第12回会議 速報 野村直弘/廣瀬周平

2026/04/13野村直弘(弁護士)廣瀬周平(弁護士) アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 野 村 直 弘

弁護士 廣 瀬 周 平

 

1 第12回会議の開催

 2026年3月18日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第12回会議が開催された。法務省のウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]

 第12回会議では、会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案の取りまとめについて審議された。第11回会議では、中間試案のたたき台が「部会資料11」として提出されて審議されたが、第12回会議では、それに修正を加えた中間試案(案)が、「部会資料12-1」および「部会資料12-2」として提出された(以下、総称して「部会資料12」という。「部会資料12-2」には、「部会資料11」からの変更点の説明が付されている。)。そして、「部会資料12-1」に修正を加えたものを「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」とすることが決定された。

 「部会資料11」の内容は第11回会議の速報で紹介したため[2]、本稿では、「部会資料12」をもとに、「部会資料11」からの変更点のうち主要なものを取り上げて解説する。

 

2 株式の発行の在り方に関する規律の見直し

 株式の無償交付の対象範囲の見直しに関して、「部会資料11」では、その具体的な枠組みとして、表1の【A案】または【B案】のいずれかによることが提案された。これに対して、「部会資料12」では、第11回会議の議論を踏まえ、【A案】および【B案】の規律をいずれも設ける考え方があることが明確化された。

 

(表1)使用人等に対する株式の無償交付の具体的な枠組みの案

【A案】

株主総会の決議を要件とせずに取締役会の決議のみで使用人等に対する株式の無償交付を可能にすることとした上で、有利発行規制に服するものとして一定の規律を設ける。

【B案】

株主総会の決議により使用人等に対する株式の無償交付を可能にすることとした上で、有利発行規制に服しないものとして一定の規律を設ける。

 

3 株主総会の在り方に関する規律の見直し

⑴ バーチャル株主総会およびバーチャル社債権者集会

ア バーチャルオンリー株主総会の実施要件

 場所の定めのない株主総会(以下「バーチャルオンリー株主総会」という。)を実施するための要件に関して、「部会資料11」では、定款の定めを含め、一定の規律を設けることが提案された。

 「部会資料12」では、この提案自体は維持しつつも、第11回会議の議論を踏まえ、定款の定めを実施要件としない考え方をとる場合には、株主の意思を反映させるための代替手段について、場所の定めのある株主総会の開催請求権を認めることに限定せず検討する必要があることが注記において明確化された。また、この見直しを行う改正法の施行日よりも前に産業競争力強化法66条1項の規定により株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨の定款の定めがある株式会社については、上記の実施要件としての定款の定めがあるものとみなすことを想定している旨が注記された。

イ 株主総会の決議の取消しの訴えの特則

 バーチャルオンリー株主総会の決議の取消しの訴えの特則(セーフハーバールール)に関して、「部会資料11」では、表2の下線部が「⑴および⑵のいずれにも該当するときに限り」とされていたが、「部会資料12」では、第11回会議の議論を踏まえ、「⑴または⑵のいずれかに該当するときに限り」に改められた。

 また、「部会資料12」では、表2の(1)における「故意または重大な過失」の対象について、「通信障害が生じたこと」ではなく「通信障害による取消事由が生じたこと」とする考え方もある旨が注記された。

 

(表2)セーフハーバールールの規律の案

株式会社が合理的に必要と認められる範囲内において通信障害対策措置をとった場合において、通信障害により株主総会の決議の方法が法令または定款に違反したときは、次のまたは⑵のいずれかに該当するときに限り、株主総会の決議取消事由となる。

⑴ 株式会社の故意または重大な過失によって通信障害が生じたこと。

⑵ 通信障害により株主総会の決議の方法が法令または定款に違反した事実が決議に影響を及ぼすものであること。

 

⑵ 実質株主確認制度

ア 株式会社から実質株主を確認する制度

 株式会社から実質株主を確認する制度について、「部会資料12」では、その趣旨を「株式会社と株主との間の建設的な対話の促進」に求めることが明記された。

 また、実質株主による株主総会への代理出席および議決権の行使に関して、「部会資料11」では、「仲介機関である名義株主が、その指図権者を代理人として議決権を行使することを禁止する旨の定款の定めは、その効力を有しない。」との規律を設けることが提案されたが、「部会資料12」では、第11回会議の議論を踏まえ、この指図権者は、この制度を通じて上場会社が把握した指図権者のみを対象にすることに改められた。

イ 株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度

 株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度について、「部会資料11」では、大量報告・変更報告書の不提出が議決権の停止の対象となる規律を設けることが提案され、その対象となる変更報告書の範囲は、「株券等保有割合の1%以上の増減に係るものおよびこれに準ずる変更に係るものに限る。」とされていた。これに対して、「部会資料12」では、保有目的を純投資から重要提案行為等を行うことに変更した場合等、株券等保有割合の1%以上の増減を伴わない変更事由であっても会社に対する影響力との関係において重要である変更もあるとの意見が第11回会議で示されたことを踏まえ、「軽微な変更に係るものを除く。」という規律に変更された。

 また、「部会資料12」では、第11回会議の議論を踏まえ、議決権停止通知は、当該通知に係る違反の内容を明らかにしてしなければならないとの規律が追加されるとともに、議決権停止通知をするか否かの決定を取締役会決議事項とはしない考え方もある旨が注記された。

 

⑶ 「会議体」としての株主総会等に関する規律の見直し

 事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化に関して、「部会資料11」では、3の【A案】もしくは【B案】のいずれかまたは双方によることが提案された。

 「部会資料12」では、第11回会議の議論を踏まえ、【A案】および【B案】のいずれも、株主総会の開催自体は必要であることを前提とする制度であることが明確化された。

 また、【B案】の「事前の議決権の行使」について、「部会資料11」では、「株主総会において当該議決権の行使の内容を変更した株主がしたもの」を除外することとされていたが、これによると、取締役等の説明義務違反によって事前の議決権の行使の内容を変更しなかった株主が相当数に上る場合にも当該説明義務違反が株主総会の決議取消事由とならないこととなって相当でないとの意見が第11回会議で示された。そこで、「部会資料12」では、この除外される事前の議決権の行使は「株主総会に出席した株主がしたもの」に修正された。

 

(表3)事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化の案

【A案】

事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度として、一定の規律を設ける。

【B案】

株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使の期限までに、「事前の議決権の行使」により、当該議案について議決権を行使することができるすべての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たした場合には、株主総会の議事によって株主総会の決議の方法が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なときに該当したことは株主総会の決議取消事由とならない旨の規律を設ける。

 

⑷ 株主提案権に関する規律の見直し

 株主提案権の行使期限(株主総会の日の8週間前まで。会社法303条2項、305条1項)の見直しに関して、「部会資料11」では、4の【A案】から【C案】までのいずれかによることが提案された。

 「部会資料12」では、【A案】で想定される期間について、「部会資料11」で「9週間または10週間」とされていたものが、より幅を持たせた「10週間程度」に改められた。また、【B案】の「通知」について、上場会社か否か等、株式会社の類型や規模に応じて公告をもってこれに代えることができるものとすることも含めて引き続き検討する旨が注記された。

 

(表4)株主提案権の行使期限の見直しの案

【A案】

「8週間」の期間を延長する。

【B案】

株式会社が一定の時期(株主総会の日の4か月前とすることを想定している。)までに株主総会の日を株主に対して「通知」した場合には、株主は、当該株主総会の日の一定の期間(3か月間とすることを想定している。)前までに株主提案権を行使しなければならない旨の規律を設ける。

【C案】

現行法の規律の見直しをしない。

 

4 企業統治の在り方に関する規律およびその他の規律の見直し

 責任限定契約制度の見直しに関して、「部会資料11」では、株式会社が責任限定契約を締結することができる相手方に業務執行取締役等(会社法2条15号イ)である取締役および執行役(以下、総称して「対象者」という。)を加えるとともに、株式会社と対象者との利益が相反する状況にあるときに行われた行為に基づく当該対象者の会社法423条1項の責任については、責任限定契約による責任限定の対象外とする規律を設けることが提案された。「部会資料12」では、第11回会議の議論を踏まえ、「職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないとき」(会社法427条1項)という責任限定契約における現行法上の責任限定の要件は、対象者にも適用されることを前提にしている旨が注記された。

 

5 次回以降の会議の見通し

 第12回会議の後、「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」が法務省のウェブサイトに掲載された[3]。これに関するパブリック・コメントの手続は、2026年5月22日までの期間で実施される。

 第13回会議は、2026年4月15日に開催される予定である。

以 上



[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00331.html (2026年4月9日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)

執筆者

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    弁護士

    野村直弘

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2013年東京大学法学部卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事・労務、紛争解決、サステナビリティ法務に関する業務を広く取り扱う。
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    弁護士

    廣瀬周平

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2022年京都大学法学部卒業。2024年京都大学法科大学院修了。
    2025年弁護士登録(東京弁護士会)。主にコーポレート案件、事業再生案件を中心として、M&A、紛争解決に関する業務を広く取り扱う。

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