「速報・詳解 会社法改正動向」第13回会議 速報 佐賀洋之/王肇寧
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 佐 賀 洋 之
弁護士 王 肇 寧
1 第13回会議の開催
2026年4月15日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会(以下「本部会」という。)の第13回会議が開催され、同月16日、法務省内の本部会のウェブサイトにおいて、同会議に関する議題、議事概要および参考人提供資料等が掲載された[1]。
第13回会議の議題は、「参考人からの意見聴取」である。第12回会議において「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」(以下「中間試案」という。)[2]が取りまとめられ、2026年4月2日から同年5月22日まで意見募集手続(いわゆるパブリック・コメント手続)[3]に付されていることを踏まえると、第13回会議は、中間試案に対する実務関係者(具体的な顔ぶれは表1のとおり)からの意見を聴取し、今後の要綱案の取りまとめに向けた審議の参考とする位置付けにあるものとみられる[4]。
(表1)参考人の顔ぶれ
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氏名 |
肩書 |
提供資料名 |
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木村 康宏氏 |
一般社団法人Fintech協会 |
スタートアップ・エコシステムの真の加速に向けて 「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」に対するスタートアップ企業からの提言 |
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森本 健一氏 |
日本証券業協会 常務執行役 |
「株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項」について |
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小倉 加奈子氏 |
日本公認会計士協会 副会長 |
会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案 開示・監査一本化に関する会員向けアンケート調査結果(概要版)及びJICPAの意見 |
2 参考人提供資料および関連論点
⑴ 木村参考人提供資料の関連論点
木村参考人の提供資料は、スタートアップの資金、時間、人材といった経営資源を事業成長に集中させる必要性を強調しつつ、①会社法関連手続の利便性を高める「攻めのDX」と、②濫用的な権利行使を抑制する「守りの規律」の双方を重視する構成となっている。
まず、「攻めのDX」に関する論点としては、バーチャルオンリー株主総会の一般法化、知的財産権等の現物出資にかかる検査役調査の見直し、従業員等に対する株式の無償交付の解禁等が挙げられている。特に、従業員等に対する株式の無償交付については、採用や人材インセンティブの機動性の観点から、取締役会決議による実施を基本とする案を支持する方向の意見が示されている。
次に、「守りの規律」に関する論点としては、実質株主確認制度における実効性確保、株主提案権の要件の見直し、臨時株主総会の招集請求権の要件の見直し、業務執行事項にかかる株主提案の取扱い等が挙げられている。これらは、同氏が代弁するところの、上場後のスタートアップ企業における資本市場との対話や、少数株主権の濫用的行使に対する実務上の懸念と関係するものと考えられる。
このほか、株式交付制度の拡充、上場会社である株式交付親会社における反対株主の株式買取請求権の見直し、業務執行取締役等を責任限定契約の対象に含めること等も取り上げられており、木村参考人からは、スタートアップ企業の成長資金調達、M&A、人材獲得および上場後のガバナンス運営に横断的に関わる論点について幅広い意見聴取がなされたものと推測される。
⑵ 森本参考人提供資料の関連論点
森本参考人の提供資料は、中間試案第2部第3「株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項」に対応するものであり、主として、①書面交付請求制度、②書面による議決権の行使、③株主総会の招集の電磁的方法による通知に関する実務上の課題を整理している。
書面交付請求制度については、証券会社における取次実務の件数、受付方法、顧客からの照会内容等を踏まえ、現行制度の利用状況と事務負担が示されている。同提供資料によれば、2022年9月から2024年12月までの証券会社における書面交付請求の取次件数は、聴取対象22社合計で118,518件、対象口座数31,473,959口座であり、対象口座数に対する取次件数の比率は0.377%とされているが、口座管理機関において銘柄ごとの請求状況を管理する必要、基準日直前の請求への対応、顧客からの制度説明に関する照会対応等の各種負担が存在することが指摘されている。
中間試案では、書面交付請求制度および書面による議決権の行使について、それぞれ見直し案と現行法維持案が示されている。これらの論点の背景には、部会審議において、デジタルデバイドにある株主への配慮をどのように位置付けるかという問題意識があった。この点について、森本参考人の提供資料は、証券会社の任意のサービスとして当該対応を担わせることの是非、事務負担や費用負担、誤処理が生じた場合の責任関係等を問題としている。
また、株主総会の招集通知を電磁的方法により行うための仕組みについては、株主のメールアドレス等をどのように把握し、正確性を確保するかが重要な論点となる。森本参考人の提供資料では、既存口座を含めて証券会社がメールアドレス等を保有していない場合や、複数口座・複数メールアドレスに対応する必要がある場合の実務上の困難が指摘され、代替的な仕組みとしてマイナポータルの活用にも言及されている。したがって、第13回会議では、株主総会のデジタル化を進めるに当たり、発行会社、株主、証券会社その他の関係者の役割分担を実務上および法律上どのように整理するかが、森本参考人からの中心的な意見聴取事項となったものと予想される。
⑶ 小倉参考人および小島参考人提供資料の関連論点
小倉参考人・小島参考人の提供資料は、中間試案第3部第3「事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化」に関するものである。この論点は、有価証券報告書の総会前開示を進める一方で、会社法上の事業報告等と金融商品取引法上の有価証券報告書との間に重複や差異があることから、開示実務および監査実務の負担をどのように整理するかという問題意識に基づくものである。
提供資料では、監査法人の監査チーム、公認会計士である社外役員、組織内会計士を対象として実施されたアンケート結果が示されている。監査法人の監査チームについては、2,625チームから回答があり、上場会社向けアンケートでは、会社法改正により有価証券報告書と事業報告等の開示書類を一本化する方向を支持する回答が70.5%に上っているとされている。
このような資料の内容からすると、第13回会議では、上場会社における開示書類の一本化、会計監査と会社法監査の一元化、事業報告等の作成・監査にかかる負担の軽減、有価証券報告書の総会前開示を行う場合のスケジュール確保等が、意見聴取の中心的な対象となったものと考えられる。特に、有価証券報告書の総会前開示の最大の障壁は株主総会の開催スケジュールにある[5]とされる一方、単に有価証券報告書の提出時期を前倒しするだけでは、二重の開示書類および二重の監査対応が残ることから、制度的な一本化をどこまで進めるかが今後の重要な検討事項となろう。
3 次回以降の会議の見通し
中間試案に関する意見募集期間は2026年5月22日までとされている。冒頭に記載のとおり、第13回会議における参考人からの意見聴取は、意見募集手続と並行して、実務の観点から中間試案の各論点を検証する意義を有するものと考えられる。本稿執筆時点において第14回会議の日程は公表されていないものの、今後は、意見募集の結果および第13回会議における意見聴取の内容も踏まえ、要綱案の取りまとめに向けて、各論点についてさらに審議が進められることが見込まれる。
以 上
[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00337.html(2026年4月24日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)
[4] 本稿執筆時点において第13回会議の議事録は公表されていない。そのため、本稿では、議事概要および公表された参考人提供資料を前提として、参考人の属性と、各資料から想定される意見聴取の対象論点を概観する。実際にどの論点についてどのような議論がされたかについては、議事録公表後の詳解版に譲ることとする。
[5] 「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案の補足説明」134頁以下。
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000311935



