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解説記事

「速報・詳解 会社法改正動向」第8回会議 速報 佐賀洋之/佐々木萌

2025/12/05佐賀洋之(弁護士)佐々木萌(弁護士) アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 佐 賀 洋 之

弁護士 佐々木   萌

 

1 第8回会議の開催

 2025年11月19日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第8回会議が開催された。法務省のウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]

 第8回会議の議題は、「株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(二読)(2)」である。具体的には、①「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し、②株主提案権に関する規律の見直し、③その他の事項の見直しがいわゆる「二読」として審議された。これらの検討事項は、すでに第4回会議でいわゆる「一読」として審議されたが、その議論の結果を踏まえ、第8回会議でさらなる検討が行われた。

 本稿では、上記ウェブサイトに掲載された「部会資料8」について、主に第4回会議の「部会資料4」との違いに着目して解説する。

 

2 「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し

 第4回会議では、「会議体」としての株主総会に関する規律について、①事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度の要否、②書面決議制度の要件の緩和、③キャッシュ・アウトの手続の要件緩和が議論されていた(詳細は、第4回会議の速報・詳解を参照[2])。

 「部会資料8」では、第4回会議の議論を踏まえ、各検討事項についてより具体的な提案がなされている。以下では、各提案の概要を紹介する。

 

⑴ 事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化

 第4回会議では、「部会資料4」において提案された事前確定型決議の仕組みをたたき台として、事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度に関する議論がされた。第4回会議の議論を踏まえて、事前の議決権の行使により株主総会の決議の成立が事実上確定しているにもかかわらず、当日の議事運営次第で株主総会の決議取消事由が生じ得る点が解決するべき問題であるとして、「部会資料8」では、事前の議決権の行使(事前の書面または電磁的方法による議決権の行使(会社法311条および同法312条)をいう。以下同じ。)がなされた場合における株主総会の決議の合理化に関し、1記載の案が提案された[3]

 

(表1)事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化に関する規律

  【A案】 【B案】
内容

⑴ 株式会社は、株主総会を招集する場合には、「会社法第298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合において、株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使により、当該議案について議決権を行使することができる全ての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たしたときは、事前の議決権の行使の期限を経過した時に当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす旨を定めることができる」旨を定款で定めることができる。

⑵ 株主総会の招集の決定時に定めるべき事項として、「会社法第298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合において、株主総会の目的である事項に係る議案について、⑴の規定による定款の定めに従い株主総会の決議があったものとみなすときは、その旨」を加える。

⑶ 取締役は、⑴の規定による定款の定めにより株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その旨を株主総会に報告する。

株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使の期限までに、事前の議決権の行使により、当該議案について議決権を行使することができるすべての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たした場合には、株主総会の決議の方法が法令または定款に違反したことは株主総会の決議取消事由とならないものとする。

概要 事前の議決権の行使がされた結果、株主総会の決議の要件を満たす場合には、株主総会の決議取消事由を限定するという方向性に基づき、株主総会の決議があったものとみなされた場合であっても、株主総会は開催しなければならないものとし、当該株主総会において、株主の質問に対する説明、報告事項の報告、株主総会の決議があったものとみなされた旨の報告等をする制度としている。 事前の議決権の行使がされた結果、株主総会の決議の要件を満たす場合には、株主総会の決議取消事由を限定するという方向性に基づき、上記提案がなされた。

 

⑵ 書面決議制度の見直し

 第4回会議では、書面決議の要件の緩和に関し、スタートアップを含め非公開会社では一部の株主と連絡が取れない場合に機動的な意思決定が行えないという問題があり、機動的な意思決定を可能とする必要があること、株主が1名でも反対すれば書面決議をすることはできないため、問題は少ないこと等を理由として、書面決議の要件の見直しに賛成する意見が多数みられた。かかる議論状況を踏まえて、「部会資料8」では、2の規律[4]が提案された。なお、株主総会の決議について2の規律を設ける場合は、株主総会に報告すべき事項の報告についても同様の規律を設けることが想定されている。

 

(表2)書面決議制度に関する規律

取締役または株主が株主総会の目的である事項についての提案を株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)に対して通知した場合において、次の⑴および⑵のいずれにも該当するときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。ただし、当該通知を発した日から1週間以内に異議を述べた株主があるときは、この限りでない。

⑴    当該提案につき総株主(当該事項について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の10分の9(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたこと。

⑵    ⑴の意思表示をした株主が株主総会において当該提案に係る決議に賛成したとすれば株主総会の決議の要件を満たすこと。

 

⑶ キャッシュ・アウトの手続の見直し

 「部会資料8」では、第4回会議の議論状況を踏まえて、①「特別支配株主」に該当する者として、総株主の議決権の10分の9以上を有している者に加え、金融商品取引法27条の2第6項に規定する公開買付けにより総株主の議決権の3分の2以上を有することとなった者を含めることの可否および②「特別支配株主」について、複数の株主の議決権を合算して議決権保有割合を算定できる旨の見直しを行わないことの可否について検討対象とされた。

 上記①の規律は、買収者が公開買付けにより総株主の議決権の3分の2以上10分の9未満を取得した場合には、キャッシュ・アウトのために株主総会の決議が必要であることに伴って金銭の交付時期が遅れることとなり、1段階目の公開買付けに一種の強圧性をもたらすという弊害が生じてしまうため、そのような弊害を是正する趣旨を踏まえて検討されているものである。なお、2段階買収における1段階目の取引は他社株の公開買付けによってのみ行われるものではないことから、その他の場面(いわゆる自社株TOB等)についても適用対象に含めるかどうかについて検討する必要性について留保されている。

 

3 株主提案権に関する規律の見直し

 株主提案権については、主として①株主提案権の議決権数の要件および②株主提案権の行使期限の見直し、③業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出の制限が検討事項となっている。

 第4回会議では近年の投資単位の引下げの状況を踏まえて多岐にわたる意見がみられ(詳細は、第4回会議の速報・詳解を参照[5])、これらの意見を踏まえて「部会資料8」では、上記①に関して3記載の案[6]が提示された。

 

(表3)「部会資料8」で提案された株主提案権の議決権数の要件[7]

  【A案】 【B案】

内容

議決権数の要件を廃止する。

「300個」という議決権数の要件を一定の個数(例として500個)まで引き上げる。

根拠

上場会社か非上場会社かによって発行済み株式総数が異なり、一律に300個の議決権を要件とすることは不合理である。
株主提案制度が創設された昭和56年当時と比して、会社と株主の間のコミュニケーションの手段は豊富となっており、現在では株主提案権を当該コミュニケーションの手段と位置付けるのは難しい。

近年の投資単位の引下げの状況を踏まえて個数を再度検討する必要がある。

 ※ なお、投資単位の平均値のみならず、上場会社における投資単位の分布を踏まえることが重要であるという指摘も存在。

 

 第4回会議の議論を踏まえて、上記②(株主提案権の行使期限の見直し)については、現行法の下において見直しを正当化するに足りる不都合が生じているかが検討事項とされ、上記③(業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出の制限)については、見直しを行わないことの是非が検討事項となった。

 

4 その他の事項の見直し

 株主総会のデジタル化に関しては、①会社法316条2項に規定する調査者(以下「2項調査者」という。)制度および②株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者に関する事項の見直しが検討事項とされていた(詳細は、第4回会議の速報・詳解を参照[8])。

 「部会資料8」では、第4回会議における議論状況を踏まえ、上記①については、現行法の規律の見直しをする案が改めて示され、4記載の規律を設けることの是非が検討事項とされた。また、上記②については、見直しの要否が検討事項とされた。

 

(表4)「部会資料8」で提案された会社法316条2項に規定する調査者制度に関する規律の概要

  • 取締役会設置会社において動議により決議をすることができる株主総会の目的である事項から、2項調査者の選任を除外する。
  • 提案株主の2項調査者の選任に関する請求議案について、①提案の理由、②調査の目的である事項、③候補者に関する事項、④報酬の額(額が確定していない場合はその算定方法)のほか、株主の議決権の行使について参考となると認められる事項を取締役に通知することに加え、取締役(会社法297条4項の規定により提案株主が株主総会を招集する場合には、当該提案株主)は株主総会の招集に際して、通知された事項を株主に通知する。
  • 会社法960条1項の特別背任罪の主体に2項調査者を加える。

 

5 次回以降の会議の見通し

 第9回会議は2025年12月以降に開催される見込みである。

以 上

 


[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00315.html(2025年12月2日最終閲覧)

[2] 第4回会議 速報:https://code.shojihomu.jp/document/019a077aac9e4950788a2821
      第4回会議 詳解:https://code.shojihomu.jp/document/019a9fa7a759cc6115e2ecea

[3] 表1に記載されている案のほかに、「株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使の期限までに、事前の議決権の行使により、当該議案について議決権を行使することができる全ての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たした場合において、株主総会の議長がその旨を宣言したときは、当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。」旨の規律を創設することも提案されたものの、敢えて当該規律を創設する必要性は乏しいと整理されている。

[4] 社債権者集会に関しても議決権者の全員の同意によりその決議があったものとみなす制度(会社法735条の2)があることから、同様の見直しをすることや機動的な社債権者集会の決議を重視して社債権者に異議申述権を認めずに多数決による決議を可能とすることについて、その立法事実の有無等を含めて検討することが指摘された。

[5] 第4回会議の速報・詳解については前掲注[2]を参照。

[6] 3のA案およびB案のいずれにおいても、その他に検討を有する事項として、適用対象となる会社の範囲に書面または電磁的方法による議決権の行使がされる会社であれば非上場会社であっても含まれるとするか(取締役会設置会社以外の株式会社も含まれるとするか)、上場会社に限るべきかが指摘された。

[7] その他にも、3のA案と組み合わせて、定款の定めにより議決権数の要件を排除することができるものとする案、または3のB案と組み合わせて、定款の定めにより更に議決権数の要件を一定の個数まで引き上げることができるものとする案も紹介された。

[8] 第4回会議の速報・詳解については前掲注[2]を参照。

 

執筆者

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    弁護士

    佐賀洋之

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2012年東京大学法学部卒業。2014年東京大学法科大学院修了。2015年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2021年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了。2022年ニューヨーク州弁護士登録。主に国内外のM&A、ベンチャー投資、一般企業法務、株主総会対応等のコーポレート案件を取り扱っている。

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    弁護士

    佐々木萌

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年中央大学法学部卒業。2021年東京大学法科大学院中退。2023年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、コーポレート、メインランドチャイナ法務を中心として、M&A、国際通商および経済安全保障に関する業務を広く取り扱う。

  • https://www.amt-law.com/

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

    <事務所概要>
    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。

    <連絡先>
    〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

     

    * 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用