「速報・詳解 会社法改正動向」第11回会議 速報(中間試案のたたき台の公表)① 坂本佳隆/山田智希/神尾啓介
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 坂 本 佳 隆
弁護士 山 田 智 希
弁護士 神 尾 啓 介
1 第11回会議の開催
2026年2月25日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第11回会議が開催された。法務省のウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]。
第11回会議の議題は、「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案のたたき台について」である。同会議では、中間試案のたたき台として「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案のたたき台」(以下「中間試案のたたき台」という。)が示され、過去10回にわたる会議における審議内容を踏まえた論点と今後の方向性が整理されたうえ、審議が行われた。具体的には、①株式の発行の在り方に関する規律の見直し、②株主総会の在り方に関する規律の見直し、③企業統治の在り方に関する規律およびその他の規律の見直しが検討事項として審議された。
この中間試案のたたき台は、これまでの議論を理解し今後の会社法改正に向けた方向性を展望するうえで有用な資料であることから、本稿および次稿では、この中間試案のたたき台に沿って、これらの検討事項の概要を解説する。本稿ではまず、中間試案のたたき台のうち、主に株主総会に関する部分(「第2部 株主総会の在り方に関する規律の見直し」)について取り上げる。
2 バーチャル株主総会
バーチャル株主総会については、第3回会議において、①実施要件、②実施する際の手続等、③株主総会決議取消しの訴えの特則、④株主総会の延期または続行、⑤その他の規律(場所の定めのある株主総会の開催請求権)、⑥適用対象となる株式会社の範囲および株主総会の類型が検討事項とされ、⑦バーチャル社債権者集会についても、類似する論点が議論され(詳細は、第3回会議の速報・詳解を参照[2])、第7回会議において、これを踏まえ、各検討事項についてより具体的な提案がなされた(詳細は、第7回会議の速報・詳解を参照[3])。
中間試案のたたき台では、第3回会議および第7回会議の議論を踏まえ、各検討事項に関する中間試案のたたき台が示されている。以下では、当該たたき台の概要を示すとともに、「部会資料7」からの主な変更点を簡単に整理する。
⑴ バーチャルオンリー株主総会[4]の実施要件
中間試案のたたき台では、以下の表1のとおり、バーチャルオンリー株主総会の実施要件に関する規律のたたき台が示されている。
(表1)中間試案のたたき台で示されたバーチャルオンリー株主総会の実施要件の概要
|
たたき台の内容 |
|
|
定款の定め |
株式会社は、株主総会の場所を定めないことができる旨を定款で定めることができる。 |
|
必要な措置 |
株式会社(会社法297条4項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主)は、株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法としてインターネットを使用することに支障のある株主の利益を確保するための措置として、次のアからエまでのいずれかの措置をとらなければならない。 ア 株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法を使用することに支障のある株主の希望により、当該通信の方法を使用するために必要となる機器の貸出しをすること イ アの通信の方法として電話を定めること ウ 会社法298条1項3号に掲げる事項を定めること エ アからウまでの措置をとらないことについて、株主の全員の同意を得ること |
|
通信方法 |
株式会社は、合理的に必要と認められる範囲内において、株主総会の議事における情報の送受信を、即時に、かつ相互に行うことができる通信の方法を使用しなければならない。 |
なお、上記のうち、定款の定めの要否に関しては、中間試案のたたき台において、第7回会議を踏まえ、定款の定めを実施要件としない考え方を採る場合、一定割合の議決権を有する単独または複数の株主に対して下記⑷②の場所の定めのある株主総会の開催請求権を認めることを併せて検討する必要があることが示されている。
⑵ バーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続等
中間試案のたたき台では、以下の表2のとおり、バーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続等に関する規律のたたき台が示されている。
(表2)中間試案のたたき台で示されたバーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続等の概要
|
たたき台の内容 |
|
|
招集決定および招集通知 |
招集の決定事項および招集の通知事項に次のアからオまでの事項を加える(ただし、オは招集の通知事項のみ)。 ア 「株主総会の場所」に代えて「株主総会の場所を定めない旨」 イ 株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法 ウ 株主が会社法311条1項または312条1項の規定による議決権の行使をした場合において、当該株主が株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法を使用したときにおける当該議決権の行使の効力の取扱い エ 株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法としてインターネットを使用することに支障のある株主の利益を確保するための措置の内容 オ 株主が株主総会の議事において上記イの通信の方法(通信障害が生じた場合に代替する通信の方法を含む。)を用いて情報の送受信をするために必要な事項 |
|
株主総会議事録 |
株主総会の議事録の記載事項に次のアおよびイの事項を加える。 ア 株主総会の議事における情報の送受信に用いた通信の方法 イ 株主総会の場所を定めなかった旨 |
|
通信記録等の保存・閲覧謄写請求 |
⑴ 株式会社は、株主総会の議事における通信履歴および通信内容を記載し、または記録した書面または電磁的記録(以下「通信記録等」という。)を作成し、株主総会の日から一定の期間、当該通信記録等を保存しなければならない。 ⑵ 株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、請求の理由を明らかにして、通信記録等の閲覧または謄写の請求をすることができ、株式会社は、一定の場合(会社法311条5項各号と同様の規律を設け、これらのいずれかに該当する場合を想定している。)を除き、これを拒むことができない。 |
なお、「部会資料7」では、株主による通信記録等の閲覧等の規律を設けることの是非が検討事項として明確に提案されていた。そこで、中間試案のたたき台では、第7回会議での審議を踏まえ、①保存することが求められる通信記録等の具体的内容や保存期間(株主総会の議事録と同様に10年間とする考え方、それより短い期間(たとえば1年間)とする考え方)に関する現状の想定や、②株主による通信記録等の閲覧等に裁判所の許可を要件とする考え方が示されている。
⑶ 株主総会の決議の取消しの訴えの特則(セーフハーバールール)
中間試案のたたき台では、以下の表3のとおり、バーチャル株主総会の決議の取消しの訴えの特則(セーフハーバールール)に関する規律のたたき台が示されている。
(表3)中間試案のたたき台で示されたセーフハーバールールの概要
|
たたき台の内容 |
|
|
セーフハーバールール |
株式会社が合理的に必要と認められる範囲内において通信障害対策措置[5]をとった場合において、通信障害により株主総会の決議の方法が法令または定款に違反したときは、次の⑴および⑵のいずれにも該当するときに限り、株主総会の決議取消事由となる。 ⑴ 株式会社の故意または重大な過失によって通信障害が生じたこと。 ⑵ 通信障害により株主総会の決議の方法が法令または定款に違反した事実が決議に影響を及ぼすものであること。 |
これまでの審議では、「部会資料3」において、セーフハーバールールに関する規律が検討事項とされ、また「部会資料7」においてセーフハーバールールの適用要件として通信障害による瑕疵が決議に影響を及ぼさないものであることを含める規律の是非が、それぞれ検討事項として提案されていた。上記の整理は、これらの議論を踏まえて示されているものである。
⑷ その他
「部会資料7」では、バーチャル株主総会に関するその他の規律について、①株主総会の延期または続行、②場所の定めのある株主総会の開催請求権、③規律の適用範囲が主な検討事項とされた。中間試案のたたき台では、以下の表4のとおり、バーチャル株主総会に関するその他の規律のたたき台が示されている。
(表4)中間試案のたたき台で示されたバーチャル株主総会に関するその他の規律の概要
|
たたき台の内容 |
|
|
① |
バーチャルオンリー株主総会の延期または続行に関して、通信障害により株主総会の議事に著しい支障が生じる場合には当該株主総会の議長が当該株主総会の延期または続行を決定することができる旨の決議がある場合において、当該決議に基づく議長の決定があったときは、会社法298条および299条の規定は適用しない旨の規律を設けるものとする。 |
|
② |
株主に対して場所の定めのある株主総会の開催請求権を認めないものとする。 |
|
③ |
⑴ 規律の適用対象となる株式会社の範囲については、非上場会社を含むすべての株式会社を対象とするものとする。 ⑵ ハイブリッド出席型バーチャル株主総会[6]については、バーチャルオンリー株主総会に関する規律の具体的内容を踏まえつつ、基本的に、招集の決定事項および招集の通知事項に関する規律、株主総会の議事録の記載事項ならびにセーフハーバールールに関する規律に限定して規律を設ける方向で引き続き検討するものとする。 |
また、バーチャル社債権者集会についても、中間試案のたたき台では、①バーチャル社債権者集会の実施要件、②バーチャルオンリー社債債権者集会を実施する際の手続等、③社債債権者集会の決議の不認可の特則に関する規律が示されている。バーチャル社債権者集会に関連して、「部会資料7」では、振替社債の社債権者が社債権者集会で議決権を行使するには書面による証明書の提示が必要とされていること(社債、株式等の振替に関する法律86条)について、電磁的記録による証明書の提示も可能とする等の見直しをすることの是非が検討事項として明確に提案され、中間試案のたたき台では、①電磁的記録による証明書の提示も可能とするA案、②現行法の規律の見直しをしないB案が示されている。
3 実質株主確認制度
実質株主確認制度については、第3回会議および第4回会議において、制度の趣旨、制度の基本的な枠組みが主な検討事項とされ(詳細は、第3回会議と第4回会議の各速報・詳解を参照[7])、第7回会議では、株式会社から実質株主を確認する制度と実質株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度を併せて創設する方向で具体的規律について主な検討事項とされていた(詳細は、第7回会議の速報を参照[8])。そして、第10回会議では、情報の提供または通知に要する費用負担等の新たな規律が提案された(詳細は、第10回会議の速報を参照[9])。
中間試案のたたき台では、第3回、第4回、第7回および第10回会議を踏まえ、各検討事項について中間試案のたたき台が示されている。以下では、当該たたき台の概要を示すとともに、「部会資料7」および「部会資料10」からの主な変更点を紹介する。
⑴ 株式会社から実質株主を確認する制度
中間試案のたたき台では、以下の表5のとおり、株式会社から実質株主を確認する制度に関する規律のたたき台が示されている。
(表5)中間試案のたたき台で示された株式会社から実質株主を確認する制度の概要
|
たたき台の内容 |
|
|
ア 会社による仲介機関(名義株主)への請求 |
上場会社は、仲介機関[10]である名義株主に対し、当該名義株主が有する当該上場会社の株式についての直近仲介機関[11]または指図権者[12]に係る情報を、イおよびウに定めるところにより提供することを請求することができる。 |
|
イ 仲介機関による直近仲介機関への通知 |
アの規定による請求またはこの規定による通知を受けた仲介機関は、当該請求に係る株式について当該仲介機関の直近仲介機関がある場合には、一定の期間内に、当該直近仲介機関に対し、当該仲介機関が請求または通知を受けた旨を通知しなければならない。 |
|
ウ 提供される情報 |
アの規定による請求またはイの規定による通知を受けた仲介機関は、当該仲介機関が請求または通知を受けてから一定の期間内に、当該請求をした上場会社に対し、次の①から③までに掲げる場合の区分に応じ、当該①から③までに定める事項に係る情報を提供しなければならない。 ① 当該仲介機関が有するまたは株式仲介業務の提供を受ける当該上場会社の株式(以下「確認対象株式」という。)について当該仲介機関の直近仲介機関がある場合直近仲介機関ごとに、その氏名または名称、会社法人等番号(直近仲介機関が法人であり、かつ、判明している場合に限る。)、住所、電子メールアドレス(判明している場合に限る。)および当該直近仲介機関に提供している株式仲介業務に係る確認対象株式の数 ② 確認対象株式について当該仲介機関に対する指図権者がある場合指図権者ごとに、その氏名または名称、会社法人等番号(指図権が法人であり、かつ、判明している場合に限る。)、住所、電子メールアドレス(判明している場合に限る。)および当該指図権者が議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する確認対象株式の数 ③ 確認対象株式に①または②のいずれにも該当しないものがある場合その株式の数 |
|
エ 費用負担 |
イまたはウの規定による情報の提供または通知に要する費用は、アの規定による請求をした上場会社の負担とする。 |
|
オ 過料 |
次に掲げる者は、過料に処する。 ① 故意または重大な過失によりイの規定による通知をせず、または虚偽の通知をした者 ② 故意または重大な過失によりウの規定による情報の提供をせず、または虚偽の情報を提供した者 |
|
実質株主による株主総会への代理出席および議決権の行使 |
実質株主による株主総会への代理出席および議決権の行使について、次の①および②の規律を設けるものとする。 ① 仲介機関である名義株主が、その指図権者を代理人として議決権を行使することを禁止する旨の定款の定めは、その効力を有しない。 ② ①の場合における議決権の行使については、会社法310条5項の規定は、適用しない。 |
これらに関連し、まず「部会資料7」では、実質株主の確認の基準時(どの時点おける情報が提供対象になるか)、および回答期間(上場会社への情報提供期限)が検討事項として取り上げられ、中間試案のたたき台では、第7回会議を踏まえ、一定の制限を設けることや期間制限を設けることの要否について引き続き検討事項とされている。併せて、直近仲介機関への請求の通知期限(転送期限)および上場会社への情報提供期限についても、具体的な期限の例が示されている。
次に、費用負担に関し、「部会資料10」では、株式会社から実質株主を確認する制度に基づく情報の提供または通知に要する費用を上場会社の負担とする規律が提案され、中間試案のたたき台では、第10回会議を踏まえ、仲介機関による不当な請求を防止する観点や株式会社における予測可能性確保の観点から、仲介機関に費用額の事前の開示を求めて差別的な請求を禁止することや、1回の確認請求において各仲介機関が会社に請求できる費用の上限額や会社が全仲介機関に支払う費用の総額の上限額を設けること等、一定の手当てを設けることの要否が検討事項とされた。
また、実質株主による株主総会への代理出席および議決権の行使に関し、「部会資料10」では、名義株主が、株式会社から実質株主を確認する制度に基づき上場会社に情報が提供された指図権者を代理人として議決権を行使することを禁止する旨の定款の定めは、その効力を有しないとする規律が提案され、中間試案のたたき台では、その実効性を確保するための規律として違反者の議決権を停止する考え方の是非が検討事項とされた。
⑵ 株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度
中間試案のたたき台では、以下の表6のとおり、株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度についてのたたき台が示されている。
(表6)中間試案のたたき台で示された株式会社から実質株主を確認する制度の概要
|
たたき台の内容 |
|
|
上場会社に対する大量保有・変更報告書の提出 |
金融商品取引法(以下「金商法」という。)に基づく大量保有報告書または変更報告書(以下「大量保有・変更報告書」という。)を提出しなければならない者(上場会社が発行する株券等の保有者に限る。)は、その提出期限までに、当該大量保有・変更報告書を、その株券等を発行する上場会社に提出しなければならない。 なお、当該大量保有・変更報告書の提出は、金商法に基づく大量保有・変更報告書の提出に代えることができ、この場合には下記備置、閲覧・謄写請求の規定は適用されない。 |
|
大量保有・変更報告書の備置 |
上場会社は、上記規定に基づく大量保有・変更報告書の提出があった日から一定の期間(5年とすることを想定している。)、当該大量保有・変更報告書をその本店に備え置かなければならない。 |
|
閲覧・謄写請求 |
株主は、上場会社の営業時間内は、いつでも、上記規定に基づく大量保有・変更報告書の閲覧または謄写の請求をすることができる。 |
|
議決権停止通知 |
上記規定に違反して大量保有・変更報告書を提出しないまたは重要な事項につき虚偽の記載があり、もしくは記載すべき重要な事項の記載が欠けている大量保有・変更報告書を提出した者(以下「違反者」という。)がある場合において、その違反に係る株券等を発行する上場会社が違反者に対して議決権を有しないものとする旨の通知(以下「議決権停止通知」という。)をした時から一定の期間を経過したときは、違反者が保有する当該上場会社の株式(当該通知後に違反者が保有するに至ったものを含む。)は、違反者が保有する間、議決権を有しない。ただし、その違反の事実が発生した日から一定の期間(5年とすることを想定している。)またはその違反に係る大量保有・変更報告書が追完された日から一定の期間が経過した後は、この限りでない。 |
|
議決権停止通知に係る機関決定 |
上場会社が議決権停止通知をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。 |
このうち、議決権停止通知の手続等に関して、「部会資料7」では、株式会社が違反者に対して通知をすることにより、通知後一定期間経過後に議決権停止の効果が生ずる規律が提案され、「部会資料10」および第10回会議では、①株主総会に先立って株式会社が違反者に対して通知することの意義、②議決権停止通知の効果を否定する大量保有・変更報告書の追完の意義が検討事項とされた。中間試案のたたき台では、第7回会議を踏まえ、①議決権停止通知の効力が生ずるまでの期間の考え方、②追完の定義の想定や追完により議決権の停止の効力が解除されるまでの期間の考え方が示されている。また、議決権の停止を株主総会の決議に反映するために何らかの手当てをすることの要否が検討事項とされた。
また、中間試案のたたき台では、第7回会議および第10回会議を踏まえ、議決権停止通知欠缺の場合における違反者の議決権行使に関して、株主総会決議の取消事由を構成する具体的場面の想定を示している。
4 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項
株主総会のデジタル化に関しては、①書面交付請求制度、②書面による議決権の行使、③株主総会の招集の電磁的方法による通知についての見直しが検討事項とされていた(詳細は、第3回会議、第4回および第7回会議の各速報・詳解を参照[13])。
中間試案のたたき台では、第7回会議および第8回会議を踏まえ、②については、バーチャルオンリー株主総会を開催する場合に、インターネットを使用することに支障のある株主の利益を確保するための措置をとる必要があるという想定が示されている。
5 「会議体」としての株主総会等に関する規律の見直し
これまで、第4回会議では、「会議体」としての株主総会に関する規律について、①事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度の要否、②書面決議制度の要件の緩和、③キャッシュ・アウトの手続の要件緩和が検討事項とされ(詳細は、第4回会議の速報・詳解を参照[14])、第8回会議では、第4回会議を踏まえ、各検討事項についてより具体的な提案がなされていた(詳細は、第8回会議の速報を参照[15])。
中間試案のたたき台では、第4回会議および第8回会議の議論を踏まえ、各検討事項について中間試案のたたき台が示されている。以下では、当該たたき台の概要を示すとともに、「部会資料8」からの主な変更点を紹介する。
⑴ 事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化
中間試案のたたき台では、以下の表7のとおり、事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化に関する規律のたたき台が示されている。
(表7)中間試案のたたき台で示された事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化に関する規律
|
【A案】 |
【B案】 |
|
|
内容 |
⑴ 株式会社は、株主総会を招集する場合には、「会社法298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合において、株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使により、当該議案について議決権を行使することができるすべての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たしたときは、事前の議決権の行使の期限を経過した時に当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす旨を定めることができる」旨を定款で定めることができる。 ⑵ 株主総会の招集の決定事項および招集の通知事項として、「会社法298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合において、株主総会の目的である事項に係る議案について、⑴の規定による定款の定めに従い株主総会の決議があったものとみなすときは、その旨」を加える。 ⑶ 取締役は、⑴の規定による定款の定めにより株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その旨を株主総会に報告しなければならない。 |
株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使の期限までに、事前の議決権の行使(株主総会において当該議決権の行使の内容を変更した株主がしたものを除く。)により、当該議案について議決権を行使することができるすべての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たした場合には、株主総会の議事によって株主総会の決議の方法が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なときに該当したことは株主総会の決議取消事由とならない旨の規律を設ける。 |
A案について、中間試案のたたき台では、第8回会議の議論を踏まえ、(1)の規定による定款の定めにより株主総会の決議があったものとみなされた場合には、①株主は株主総会において(1)に規定する株主総会の目的である事項につき議案を提出することができず、また、②当該決議の成立後の事情は株主総会の決議取消事由にはならないとの想定が示された。
また、B案について、中間試案のたたき台では、第8回会議の議論を踏まえ、①要件該当性の判断の基礎となる事前の議決権の行使について、株主総会において事前の議決権の行使の内容を変更した株主がしたものを除くとともに、②株主総会の決議の方法が著しく不公正なときも株主総会の決議取消事由とならないこととしつつ、除外される株主総会の決議取消事由を「株主総会の議事によって」生じた違法または不公正に限定することとしている。
⑵ 株主総会の書面決議制度の見直し[16]
株主総会の書面決議制度に関し、「部会資料4」では、株主総会の書面決議制度において必要とされる株主の全員の同意の要件を緩和することが検討事項とされ、「部会資料8」では、第4回会議を踏まえ、書面による株主総会の決議および報告の要件として、①当該提案につき総株主(当該事項について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の10分の9(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたこと、②①の意思表示をした株主が株主総会において当該提案に係る決議に賛成したとすれば株主総会の決議の要件を満たすこと等の規律が提案された。中間試案のたたき台では、「部会資料8」における提案と同様の規律を設けることが示されている。
⑶ キャッシュ・アウトの手続の見直し
中間試案のたたき台では、以下の表8のとおり、株式等売渡請求をすることができる「特別支配株主」に該当する者に関する規律についてのたたき台が示されている。
(表8)株式等売渡請求をすることができる「特別支配株主」に該当する者に関する規律の概要
|
【A案】 |
【B案】 |
|
|
内容 |
総株主の議決権の10分の9以上を有しているものに加え、金商法27条の2第6項に規定する公開買付け(マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の設定を含む一般株主(買収者と重要な利害関係を共通にしない株主をいう。以下同じ。)の利益の確保のための公正な手続がとられたものに限る。)により総株主の議決権の3分の2以上を有することとなった者を含める。 |
現行法の規律の見直しをしない。 |
「部会資料8」では、「特別支配株主」に該当する者として、総株主の議決権の10分の9以上を有している者に加え、金商法27条の2第6項に規定する公開買付けにより総株主の議決権の3分の2以上を有することとなった者を含めることの可否等が検討事項とされた。
中間試案のたたき台では、第8回会議を踏まえ、①マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の設定を含む、一般株主の利益の確保のための公正な手続がとられたものに限り、特別支配株主に必要な議決権の保有比率を3分の2に引き下げる規律が示され、②公正な手続の具体的内容や、「マジョリティ・オブ・マイノリティ条件」の定義について検討事項とされた。
⑷ 株主提案権
中間試案のたたき台では、以下の表9のとおり、株主提案権の議決権数の要件に関する規律のたたき台が示されている。
(表9)中間試案のたたき台で示された株主提案権の議決権数の要件に関する規律の概要
|
【A案】 |
【B案】 |
|
|
内容 |
議決権数の要件を廃止する。 |
「300個」という議決権数の要件を、一定の個数まで引き上げる。 |
中間試案のたたき台では、以下の表10のとおり、株主提案権の行使期限に関する規律のたたき台が示されている。
(表10)中間試案のたたき台で示された株主提案権の行使期限に関する規律の概要
|
【A案】 |
【B案】 |
【C案】 |
|
|
内容 |
「8週間」の期間を延長する(9週間または10週間とすることを想定している。)。 |
株式会社が一定の時期(株主総会の日の4か月前とすることを想定している。)までに株主総会の日を株主に対して通知した場合には、株主は、当該株主総会の日の一定の期間(3か月間とすることを想定している。)前までに株主提案権を行使しなければならない旨の規律を設ける。 |
現行法の規律の見直しをしない。 |
|
根拠 |
電子提供措置開始日までの限られた期間のなかで、株主提案権の行 使要件を充足しているかの検討、提案株主との調整、提案に対する取締役会の意見の検討・作成等の実務対応を行う必要があり、実務上極めて大きな負担となっている。 |
現行の株主提案権の行使期限を前提とすると、株主は、定時株主総会の8週間前の時点では定時株主総会の開催日を正確に知ることができないことが通常であるため、株主提案権の具体的な行使期限を明確に把握することができない点にも問題があるとの指摘が多数あった。 |
株主総会の日の8週間前までという期限は適切であるとの意見や、見直しの必要性があるのか必ずしも明らかではないとの意見等、見直しをすることに消極的な意見が複数あった。 |
中間試案のたたき台では、第4回会議および第8回会議を踏まえ、A案における延長の適切な期間、およびB案における株式会社から株主への通知の期限についての適切な期間は、それぞれ検討事項とされた。
6 その他
その他の規律に関し、第4回会議において、①会社法316条2項に規定する調査者(以下「2項調査者」という。)制度および②株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者に関する事項の見直しが検討事項とされ(詳細は、第4回会議の速報・詳解を参照[17])、「部会資料8」では、第4回会議を踏まえ、①については、取締役会設置会社において動議により決議をすることができる株主総会の目的である事項から2項調査者の選任を除外する規律等の是非が検討事項とされ、上記②については、現行法の規律の見直しの要否が検討事項とされた。
中間試案のたたき台では、第8回会議および第9回会議を踏まえ、①について、2項調査者の調査結果の書面または電磁的記録を株式会社に提供することによる報告義務、および2項調査者の調査に応ずることにより株主の共同の利益を著しく害するときは、裁判所の許可を得て、当該調査に応ずることを拒むことができる規律等を示すとともに、②2項調査者の選任に当たって株主に通知される調査目的について具体性を有するものに限定することの要否等は検討事項とされている。
7 小括
本稿では第11回会議(中間試案のたたき台)のうち株主総会に関する部分を取り上げた。残りの部分は「第11回会議 速報(中間試案のたたき台の公表)②」として近日中に掲載予定である。
以 上
[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00330.html(2026年3月12日最終閲覧)
[2] 第3回会議
速報:https://code.shojihomu.jp/document/0198c6228e8b713f3e2f8685
詳解:https://code.shojihomu.jp/document/019a077aa257a0bc64133811
[3] 第7回会議
速報:https://code.shojihomu.jp/document/019aed169595f927e20221ec
詳解:https://code.shojihomu.jp/document/019c79d191e753ed9308cd04
[4] 場所の定めのない株主総会をいう。
[5] 通信障害対策が講じられた通信の方法を使用することをいい、通信障害が生じた場合に代替する通信の方法を使用することを含む。
[6] 物理的な場所を定めて株主総会を開催するとともに、株主総会の場所にいない株主もインターネット等の通信方法を用いて株主総会に出席することができる株主総会をいう。
[7] 第3回会議と速報・詳解については前掲注[2]を参照。
第4回会議
速報:https://code.shojihomu.jp/document/019a077aac9e4950788a2821
詳細:https://code.shojihomu.jp/document/019a9fa7a759cc6115e2ecea
[8] 第7回会議の速報・詳解については前掲注[3]を参照。
[9] 第10回会議
速報:https://code.shojihomu.jp/document/019c3191b4ab7625c24741de(詳解記事は近日公開予定)
[10] 中間試案のたたき台では、信託業法当等に基づく認可を受けた金融機関その他の者で、第三者のために、株式の所有、保管もしくは管理または証券口座の管理(以下「株式仲介業務」という。)を業として行う者(金商法に規定する投資運用業として当該株式についての株式仲介業務を行う者および当該者に当該株式仲介業務を委託する者等を除く。)をいうものとすることが想定されているが、この定義は検討事項とされた。
[11] 仲介機関が株式仲介業務を提供している他の仲介機関をいう。
[12] 仲介機関以外の者であって、信託契約その他の契約または法律の規定に基づき、仲介機関に対して上場会社の株式に係る議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する者(当該権限を有する者がその権限の全てを第三者に委任している場合には、その委任を受けた者に限る。)をいう。
[13] 第3回会議の速報・詳解については前掲注2、第4回会議の速報・詳解については前掲注7、第7回会議の速報・詳解については前掲注3をそれぞれ参照。
[14] 第4回会議の速報・詳解については前掲注7を参照。
[15] 第8回会議
速報:https://code.shojihomu.jp/document/019b43cf964330802f675418(詳解記事は近日公開予定)
[16] 社債権者集会の書面決議制度の見直しに関し、「部会資料10」では、①現に議決権を行使した議決権者(社債権者集会において議決権を行使することができる社債権者をいう。)の議決権の総額を分母とする書面決議制度(A案)と、②全議決権者の議決権の総額を分母とする多数決による書面決議制度(B案)の規律が、両案の個別の要件の比較とともに提案され、中間試案のたたき台では、①A案およびB案の双方を導入する想定の規律が示され、②社債管理補助者および社債権者が書面決議の提案をすることができるのは、社債権者集会を招集することができる場合(会社法717条3項および718条3項)と同様の場合に限定することの是非が検討事項とされた。
[17] 第4回会議の速報・詳解については前掲注[7]を参照。




