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「速報・詳解 会社法改正動向」第15回会議 速報 野村直弘/浦地智暉

2026/07/16野村直弘弁護士浦地智暉弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業https://www.amt-law.com/

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 野 村 直 弘

弁護士 浦 地 智 暉

 

1 第15回会議の開催

 2026年6月24日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第15回会議が開催された。法務省のウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]

 第15回会議から、会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討が開始された。同会議に提出された「部会資料13」は、中間試案[2]に対するパブリックコメント(以下「パブコメ」という。)の結果(寄せられた意見の概要が、「参考資料30」として同会議に提出された。)および第13回会議と第14回会議における参考人からの意見聴取を踏まえ、各検討事項について、中間試案と同様またはそれを修正する内容を提案している。第15回会議では、この「部会資料13」に基づき、①株式交付制度の見直し、②現物出資制度の見直し、③バーチャル株主総会およびバーチャル社債権者集会、④実質株主確認制度について審議された。

 本稿では、「部会資料13」に記載された検討事項のうち、中間試案とは異なる内容が提案された主な項目を取り上げて解説する。

 

2 株式交付制度の見直し

 株式交付の対象となる場面に関して、「部会資料13」では、子会社の株式を追加取得する場面を一般的に株式交付の対象とすることが提案された。これは、中間試案で提案されたA案とB案のうち、パブコメでは相対的に賛成意見の多かったA案を採用したものである。

 また、株式交付の手続に関して、「部会資料13」では、上場会社である株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないものとするか否かが検討事項とされた。中間試案では、当該請求権を認めないとする考え方が注記されていたが、パブコメでは賛否の意見が分かれ、相対的にはこの考え方に反対する意見がやや多かったという事情がある。

 

3 現物出資制度の見直し

 現物出資制度における不足額塡補責任の見直しに関して、「部会資料13」では、おおむね表1の規律を設けることが検討事項とされた。パブコメを踏まえ、中間試案におけるA案や注記の考え方を採用したものである。

 

(表1)不足額塡補責任の見直しに関する規律の案の概要[3]

現物出資者の
不足額塡補責任

ア 〔発生要件〕現物出資財産の価額が募集事項の決定時に定められた価額(会社法199条1項3号)に著しく不足する場合において、取締役との通謀があり、または現物出資財産の評価のために重要な事項について故意・重過失により株式会社に対して虚偽の説明をしたとき

イ 〔内容〕株式会社に対する決定時不足額(現物出資財産の価額が①募集事項の決定時に定められた価額(会社法199条1項3号)に著しく不足する場合の不足額または②募集株式の株主となった時(会社法209条1項)に当該価額に不足する額のいずれか低い額)の支払義務

取締役等および証明者の
不足額塡補責任

現物出資財産の価額が募集事項の決定時に定められた価額(会社法199条1項3号)に著しく不足する場合における株式会社に対する決定時不足額の支払義務で、立証責任が転換されない過失責任

 

4 バーチャル株主総会およびバーチャル社債権者集会

⑴ 株主総会の決議の取消しの訴えの特則

 バーチャルオンリー株主総会の決議の取消しの訴えの特則(セーフハーバールール)に関して、「部会資料13」では、表2の規律を設けることが検討事項とされた。中間試案からの実質的な変更点は、表2の下線部であり、通信障害対策措置について、「使用」が「用意」という文言に改められた。これは、パブコメにおいて、合理的に必要と認められる範囲内の通信障害対策措置をとったにもかかわらず、株式会社の故意・重過失による通信障害が発生する場合(表2の⑴)が想定し難いとの意見があったことを踏まえて、通信障害対策措置は、あくまで株主総会が開始される時点までの事前準備として講ずる必要がある措置とし、株主総会が開始された後の事情(準備された通信障害対策措置の運用状況)については、合理的に必要と認められる範囲内の通信障害対策措置がとられたか否かの判断としては考慮しないと整理することを意図したものである。

 

(表2)セーフハーバールールの規律の案

株式会社が、合理的に必要と認められる範囲内において、通信障害対策措置(通信障害対策が講じられた通信の方法を用意することをいい、通信障害が生じた場合に代替する通信の方法を用意することを含む。以下同じ。)として法務省令で定めるものをとった場合において、通信障害により株主総会の決議の方法が法令または定款に違反したときは、次の(1)または(2)のいずれかに該当するときに限り、株主総会の決議取消事由となる。

⑴ 株式会社の故意または重大な過失によって通信障害が生じたこと。

⑵ 通信障害により株主総会の決議の方法が法令または定款に違反した事実が決議に影響を及ぼすものであること。

 

⑵ 社債、株式等の振替に関する法律86条に規定する書面制度

 社債、株式等の振替に関する法律(以下「振替法」という。)86条の規定に基づき、振替社債の社債権者が社債権者集会において議決権を行使するには、書面による証明書の提示が必要であることに関して、中間試案では、電磁的記録による証明書の提示も可能とするA案と、現行法の規律の見直しをしないB案が提案された。パブコメでは、A案に賛成する意見が多数であったが、証明書の電子化を実現するための見直しについて、実務への負担が生ずるとの意見も示された。

 第14回会議での参考人からの意見聴取も踏まえ、「部会資料13」では、おおむね表3の規律が提案された。表3の⑸は、社債権者が振替社債を第三者に譲渡して無権利者となった後に、社債発行会社等に対して証明記録の複製データを提示して権利行使をする事態を防止する観点、⑹は、社債権者が社債発行会社等から提供を受けた提供記録を用いて振替社債を第三者に譲渡した後、当該提供記録の提供の日以前に提供された証明記録を利用して権利行使をする事態を防止する観点から提案された規律である。

 

(表3)振替法86条に規定する書面制度に関する規律の案の概要[4]

⑴ 振替社債の社債権者は、その直近上位機関(加入者にとってその口座が開設されている振替機関および口座管理機関)に対し、証明記録(振替法68条3項各号に掲げる事項および証明記録の提供日を記録した電磁的記録)の提供を請求できる。

⑵ 振替社債の社債権者が社債権者集会における議決権の行使等の権利行使をするには、振替法86条1項各号の区分に応じ、当該各号に定める者に証明記録を提示する。

⑶ ⑵の議決権の行使には、社債権者集会の日の1週間前までに証明記録の提示をし、かつ、社債権者集会の日に当該提示をする。

⑷ 振替社債の社債権者は、振替法86条1項各号に掲げる者に対し、提供記録(振替社債を特定できる事項および提供記録の提供日を記録した電磁的記録)の提供を請求できる。

⑸ 証明記録の提供を受けた社債権者は、提供記録(当該証明記録に記録された日の後に提供されたものに限る。)を直近上位機関に提供するまでの間は、振替社債の振替または抹消の申請をすることができない。

⑹ 証明記録および提供記録の提供を受けた社債権者は、当該証明記録に記録された日が当該提供記録に記録された日以前である場合には、当該証明記録をもって、社債権者集会における議決権の行使等の権利行使をすることができない。

 

5 実質株主確認制度

⑴ 株式会社から実質株主を確認する制度

 中間試案では、上場会社から実質株主を確認する仕組みとして、名義株主である仲介機関に対して情報提供を請求でき、当該仲介機関の背後にさらに仲介機関がある場合には最終の仲介機関に至るまで当該請求を順次転送しつつ、各仲介機関が自身の保有する情報を上場会社に提供するものとし、故意・重過失による情報提供の懈怠について過料の対象とする制度が提案された。

 もっとも、外国居住者または外国法人を過料に処することは実際上困難であり、制裁としての実効性に欠ける側面は否定し難く、パブコメでも、相対的には、議決権の停止を課すべきとの意見が多かったことを踏まえ、「部会資料13」では、過料に加え、(後記(2)の制度の手続を参考に)議決権の停止措置も設けることが提案された。

 

⑵ 株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度

 中間試案では、株主側から上場会社に対する通知を義務付ける仕組みとして、金融商品取引法に基づく大量保有報告制度における報告義務の範囲と基本的に同一の範囲の通知義務(大量保有・変更報告書を上場会社に提出する義務)を株主に課し、上場会社がその違反者に対して議決権停止通知をして一定の期間が経過すれば、議決権停止の効果が生じるという制度が提案された。

 この制度について、「部会資料13」では、パブコメを踏まえ、主に以下の点を変更することが提案された。

◆ 中間試案では、上場会社が議決権停止通知を「するか否かの決定」をするには、取締役会の決議によるとされていたが、これを、議決権停止通知を「する決定」をする場合に限定し、当該通知をしないことの決定機関は特に法定しない。

◆ みなし共同保有者について、たとえば、グループ内の一法人の保有分の集計が遅れてグループ全体の株券等保有割合の集計に誤りが生じ、通知義務の違反としてグループ全体が保有する上場会社株式の議決権が停止されるのは酷であることを踏まえ、みなし共同保有者に関する事項に起因する違反は、議決権停止の対象外とする。

◆ 善意・無重過失による違反については、大量保有・変更報告書の積極的な追完を促すべく、追完後3週間の経過により議決権停止の効力を失わせることとする一方で、故意・重過失による違反については、追完後最初に招集される株主総会の終結の時を経過して初めて議決権停止の効力を失わせることとする。

 

6 次回以降の会議の見通し

 第16回会議は、2026年7月22日に開催される予定である。

 以 上



[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00339.html (2026年7月15日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)

[3] 文言は適宜簡略化している。

[4] 文言は適宜簡略化している。

執筆者

  • 弁護士

    野村直弘

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。2013年東京大学法学部卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事・労務、紛争解決、サステナビリティ法務に関する業務を広く取り扱う。

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    弁護士

    浦地智暉

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。2021年東京大学法学部卒業。2023年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事労務、紛争解決に関する業務を広く取り扱う。

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    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

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