「速報・詳解 会社法改正動向」第16回会議 速報 佐賀洋之/野村賢太郎
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 佐 賀 洋 之
弁護士 野 村 賢太郎
1 第16回会議の開催
2026年7月22日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第16回会議が開催された。法務省ウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]。
第15回会議に引き続き、第16回会議では、会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討が行われた。
同会議に提出された「部会資料14」は、中間試案[2]に対するパブリックコメント(以下「パブコメ」という。)の結果(寄せられた意見の概要が、「参考資料30」として同会議に提出された。)および第13回会議と第14回会議における参考人からの意見聴取を踏まえ、各検討事項について、中間試案と同様またはそれを修正する内容を提案している。同会議では、この「部会資料14」に基づき、①株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項、②「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し、③株主提案権に関する規律の見直し、④その他の検討事項について審議された。
本稿では、「部会資料14」に記載された検討事項のうち、中間試案とは異なる内容が提案された項目を取り上げて解説する。
2 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項
⑴ 書面交付請求制度の見直し
株主総会資料の電子提供制度における書面交付請求制度に関して、「部会資料14」では、一定の移行期間を設けた上で、書面交付請求制度を廃止することが提案された。パブコメにおいては、中間試案で提案されたB案(現行法の規律の見直しを行わない案)に賛成する意見が相対的に多かったものの、書面交付請求制度に対応するための株式会社の負担は、最終的には当該株式会社の株主全体で負担していること、書面交付請求制度の利用率が低水準にとどまっていること等を理由として、中間試案で提案されたA案(一定の移行期間を設けた上で書面交付請求制度を廃止する案)を採用したものである。
なお、パブコメにおいては、A案による場合に移行期間を設けることに反対する意見がみられたものの、デジタルデバイドの株主が存在しなくなったとはいい難い状況のなかで書面交付請求制度を廃止する場合、その十分な周知を図るための期間を確保することがデジタルデバイドの株主保護のために必要であると考えられることを理由として、「部会資料14」では、移行期間を設けることが引き続き提案されている。
⑵ 書面による議決権の行使についての見直し
株主総会における書面による議決権の行使に関して、「部会資料14」では、取締役(会社法297条4項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主)は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の数が1000名以上である場合には、会社法298条1項3号または4号に掲げる事項を定めなければならないものとすることが提案された。これは、中間試案で提案されたA案とB案(現行法の規律の見直しを行わない案)のうち、パブコメで相対的に賛成意見の多かったA案を採用したものである。
なお、「部会資料14」では、社債権者集会における書面による議決権の行使(会社法726条1項)に関しても、A案と同様、書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使を選択的なものとする見直しを行うことが提案されている。
⑶ 株主総会の招集の電磁的方法による通知についての見直し
株主総会の招集の電磁的方法による通知に関する規律について、「部会資料14」では、表1の規律を設けることが検討事項とされた。パブコメを踏まえ、中間試案におけるA案や注記の考え方を採用したものである。
(表1)株主総会の招集の電磁的方法による通知に関する規律の案の概要
|
株主総会の招集の電磁的方法による通知に関し、次の⑴から⑶までの規律を設けるものとする[3]。 ⑴ 上場会社は、株主の承諾を得て、株主名簿に株主の電子メールアドレスその他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報(以下「電子メールアドレス等」という。)を記載し、または記録することができる。 ⑵ 振替法151条1項において、振替機関が発行者に対し速やかに通知しなければならない事項に、「電子メールアドレス等(当該株主が当該電子メールアドレス等の提供を承諾した場合に限る。)」を加える。 ⑶ 株主名簿に電子メールアドレス等の記載または記録がある株主に対して会社法299条3項に掲げる方法により通知を発する場合には、当該株主の承諾を要しない。 |
なお、「部会資料14」では、中間試案で提案されていなかった項目として、社債権者集会の招集の通知に関しても、募集事項で電磁的方法により社債権者集会の招集の通知を発することができることとする旨およびその方法を定めた場合には、社債権者の承諾を不要とするものとする(併せて、社債権者集会参考書類および議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができるものとする)か否かが検討事項とされた。
3 「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し
⑴ 事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化
事前の書面または電磁的方法による議決権の行使がされた場合等における株主総会の決議の合理化に関して、「部会資料14」では、概要表2に記載の規律を設けることが検討事項とされた。
(表2)事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化に関する規律の概要
|
規律1 |
⑴ 上場会社は、株主総会を招集する場合には、「会社法298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合において、株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使により、当該議案について議決権を行使することができる全ての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たしたときは、事前の議決権の行使の期限を経過したときに当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす旨を定めることができる」旨を定款で定めることができる。 ⑵ 上場会社の株主総会の招集の決定事項および招集の通知事項として、「会社法298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合において、株主総会の目的である事項に係る議案について、⑴の規定による提案の定めに従い株主総会の決議があったものとみなすときは、その旨」を加える。 ⑶ 取締役は、上記⑴の規定による定款の定めにより株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その旨を株主総会に報告しなければならず、かつ、その場合であっても、取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において、会社法314条の説明をしなければならない。 |
|
規律2 |
⑴ 下記⑵の事項を定めた場合において、上場会社の株主総会の目的である事項に係る議案について、事前の議決権の行使の期限までに、事前の議決権の行使(株主総会に出席した株主がしたものを除く。)により、当該議案について議決権を行使することができるすべての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たしたときであって、株主総会の議長がその旨を宣言したときは、当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。 ⑵ 上場会社の株主総会の招集の決定事項および招集の通知事項として、「会社法298条1項3号または4号に掲げる事項を定めた場合において、株主総会の目的である事項に係る議案について、⑴の規定により株主総会の決議があったものとみなすときは、その旨」を加える。 ⑶ 上記⑴の規定により株主総会の決議があったものとみなされた場合であっても、取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において、会社法314条の説明をしなければならない。 |
⑵ 株主総会の書面決議制度の見直し
株主総会の書面決議制度に関して、「部会資料14」では、取締役または株主が株主総会の目的である事項についての提案を株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)に対して通知した場合において、①当該提案につき総株主(当該事項について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の10分の9(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が書面または電磁的記録により同意の意思表示をした場合、かつ、②①の意思表示をした株主が株主総会において当該提案に係る決議に賛成したとすれば株主総会の決議の要件を満たす場合には、当該通知を発した日から1週間以内に異議を述べた株主があるときを除き、当該提案を可決する旨の株主総会決議があったものとみなす、との規律が提案された[4]。
⑶ 社債権者集会の決議があったものとみなす制度の見直し
社債権者集会の決議があったものとみなす制度に関して、「部会資料14」では、中間試案に示されたA案とB案いずれかまたは双方によるものとすることが提案された。A案は、現に議決権を行使した社債権者の議決権数を基準として一定割合以上の賛成による議決権行使があった場合に社債権者集会の決議があったものとみなす制度を設けるものであるのに対し、B案は、全議決権者の議決権数を基準として一定割合以上の書面または電磁的記録による同意があった場合に決議があったものとみなされる書面決議制度を設けるものである。
⑷ キャッシュ・アウト手続の見直し
株式等売渡請求をすることができる「特別支配株主」に該当する者の範囲に関して、中間試案では、総株主の議決権の10分の9以上を有している者に加え、金融商品取引法27条の2第6項に規定する公開買付け(マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の設定を含む一般株主の利益の確保のための公正な手続がとられたものに限る。)により総株主の議決権の3分の2以上を有することとなった者を含むとするA案、現行法の規律の見直しを行わないとするB案が提案された。
もっとも、パブコメにおいては、B案に賛成する意見およびA案に賛成するとしてもマジョリティ・オブ・マイノリティ条件を要件とすることに反対する意見が多数であったことを踏まえ、「部会資料14」では、現行法の規律の見直しを行わないものとすることが提案された。
4 株主提案権に関する規律の見直し
株主提案権の議決権数の要件の見直しに関して、「部会資料14」では、中間試案で示された、議決権数の要件を廃止するA案、または「300個」という議決権数を一定の個数まで引き上げるB案のいずれかによることが提案されている。
5 その他の事項の見直し
⑴ 会社法316条2項に規定する調査者
会社法316条2項に関する調査者(以下「2項調査者」という。)制度に関して、概要表3の規律を設けることが提案された。これは、不正の疑いがある株式会社が恣意的な調査を行うおそれに対する株主側の対抗手段として機能し得る2項調査者制度の実質的な機能を維持しつつ、裁判所が2項調査者を選任することにより、提案株主からの独立性・中立性を担保することで2項調査者制度の濫用を防ぐこと等を理由として、中間試案で提案されたB案を基本的に採用した上で、A案のうち一部の内容を取り入れる等の変更を加えた規律を提案したものである。
(表3)2項調査者制度の見直しに関する規律の概要
|
⑴ 会社法297条の規定により招集された株主総会においては、裁判所に対して株式会社の業務および財産の状況を調査する検査役(以下「業務検査役」という。)の選任の申立てをする旨の決議をすることができる。この場合においては、当該株主総会の決議によって、調査の目的である事項として定められた場合に限り、業務検査役の選任の申立ての決議をすることができる。 ⑵ 取締役会設置会社においては、株主総会の招集の決定において株主総会の目的である事項として定められた場合に限り、業務検査役の選任の申立ての決議をすることができる。 ⑶ 取締役会設置会社においては、取締役(業務検査役の選任の申立てを株主総会の目的である事項として会社法297条1項の規定により株主総会の招集を請求する株主(以下「提案株主」という。)が同条4項の規定により株主総会を招集する場合にあっては、当該提案株主)は、株主総会の招集に際して、議案の概要(株主総会参考書類を交付する場合にあっては、議案)を株主に通知しなければならない。 ⑷ ⑴の規定による決議があった場合には、提案株主は、会社法358条1項の規定にかかわらず、株式会社の業務および財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、業務検査役の選任の申立てをすることができる。 ⑸ 業務検査役は、会社法358条5項の規定による報告をしたときは、株式会社に対し、当該報告に係る書面の写しまたは電磁的記録に記録された事項を提供しなければならない。 ⑹ 株式会社は、⑸の規定による書面の写しまたは電磁的記録に記録された事項の提供を受けた日から2週間以内に、会社法358条5項の調査の結果を株主に通知しなければならない。この場合において、株式会社は、調査の結果の全部または一部を株主に通知することにより株主の共同の利益を著しく害するときは、裁判所の許可を得て、株主に対し、調査の結果の全部または一部を通知しないことができる。 |
⑵ 株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者の見直し
株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者について、「部会資料14」では、検査役の選任の申立権者に取締役、執行役および監査役を加えることが提案された。
これまでの部会における議論では、見直しを行う具体的な必要性は明らかでないとの意見がみられたものの、株主総会の招集手続等に関する検査役の選任は株主総会の決議そのものに直接影響を与えるものではないため、申立権者の範囲を拡大することによって生ずる弊害は限定的と考えられること、申立権者の範囲の拡大に賛成するパブコメが相対的に多かったことを踏まえ、中間試案で提案されたA案とB案(現行法の規律の見直しを行わない案)のうち、A案を採用したものである。
6 次回以降の会議の見通し
第17回会議は、2026年8月26日に開催される予定である。
以 上
[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00340.html(2026年8月3日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)
[3] 将来的な見直しとして、一定の要件の下、株主の電子メールアドレス等を株主名簿の必要的記載事項として、株主の承諾を得ずに、書面による通知の発出に代えて、電磁的方法により通知を発することができるものとする考え方がある。
[4] 報告事項の報告についても、同様の規律を設けるものとすることが提案されている。



