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「速報・詳解 会社法改正動向」第17回会議 速報 坂本佳隆/山田智希/角田怜央

2026/09/14坂本佳隆弁護士山田智希弁護士角田怜央弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業https://www.amt-law.com/

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 坂 本 佳 隆

弁護士 山 田 智 希

弁護士 角 田 怜 央

 

1 第17回会議の開催

 2026年8月26日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会(以下「本部会」という。)の第17回会議が開催された。法務省ウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]

 第16回会議に引き続き、第17回会議では、会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討が行われた。

 同会議に提出された「部会資料14」および「部会資料15」は、中間試案[2]に対するパブリックコメント(以下「パブコメ」という。)の結果(寄せられた意見の概要が、「参考資料30」として同会議に提出された。)および第13回会議と第14回会議における参考人からの意見聴取を踏まえ、各検討事項について、中間試案と同様またはそれを修正する内容を提案している。同会議では、この「部会資料14」および「部会資料15」に基づき、①その他の検討事項[3]、②指名委員会等設置会社制度の見直し、③責任限定契約制度等の見直し、④事業報告等および有価証券報告書の開示の合理化について審議された。

 本稿では、「部会資料15」に記載された検討事項のうち、中間試案とは異なる内容が提案された項目を取り上げて解説する。

 

2 指名委員会等設置会社制度の見直し

⑴ 指名委員会等の権限の見直し

 パブコメ以前から、指名委員会の権限に関して、取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役である場合であっても、取締役会の多数が会社提案の候補者とすることを相当でないと判断する者を指名委員会が候補者とする旨を決定したら当該決定が会社提案に反映されることとなることへの問題意識が、本部会では示されてきた。「部会資料15」では、そうした点につき、会社法の見直しにより対処せざるを得ないと整理した上で、A案(取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役である場合、取締役の選解任議案の内容についての指名委員会の決定の内容を取締役会の決議により変更できる旨の規律を設ける案)によることが提案された。

 指名委員会の決定の内容を変更することができる要件については、パブコメにおいて、議長が社外取締役であるなど取締役会の実効性向上に向けた取組みを行っていることを条件とすることが望ましいなどの意見もみられたものの、現行法で取締役会が指名委員会の決定を覆すことができないのは、社外取締役が過半数を占める取締役会と同等の監督機能を代替的に実現する目的であったこと、最終的な取締役の選解任は、株主総会で行われること等を理由として、取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役であれば足りるとすることが提案されている。

 他方、報酬委員会の権限に関して、パブコメにおいては、中間試案で提案されたB案(現行法の規律の見直しを行わない案)に賛成する意見が相対的に多かったものの、「部会資料15」では、指名委員会について上記の規律を設ける場合には、報酬委員会にも同様の規律を設けるか否かが検討事項とされた。これは、報酬委員会の権限を見直すべき特段のニーズ等がないなどの意見がある一方で、報酬委員会が決定した執行役等の報酬額の一部を取締役会メンバーの多数が相当でないと判断するときに当該一部のみを変更したいという場面があり得るとの考慮によるものである。

 

⑵ 監査委員会の権限等の見直し

 監査委員会の権限等に関して、「部会資料15」では、概要表1の規律を設けることが提案された。

 

(表1)監査委員会の権限等の見直しに関する規律の概要

監査委員会の権限等について、次の⑴から⑶までの規律を設けるものとすることについて、どのように考えるか。

⑴ 指名委員会等設置会社の取締役のうち、執行役を兼ねている取締役および業務を執行した取締役は、監査委員会の議事録の閲覧または謄写をすることができない。

⑵ 株式会社は、株主総会の決議によって取締役を選任するに際して、指名委員会、監査委員会および報酬委員会(以下「各委員会」という。)の委員に選定されることが予定されている取締役については、その旨を株主総会参考書類に記載しなければならず、かつ、各委員会の委員に選定予定の取締役として株主総会参考書類に記載された者が予定された委員に選定されなかった場合または当該委員を解職されもしくは辞任した場合および各委員会の委員に選定予定の取締役として株主総会参考書類に記載されていなかった者が各委員会の委員に選定された場合には、その旨およびその理由を事業報告に記載しなければならない。

⑶ 監査委員会の職務を補助すべき取締役または常勤もしくは非常勤の使用人(以下「監査補助者」という。)の設置の要否について、監査委員会が判断する。

 

 上記⑴の監査委員会の議事録の閲覧または謄写を認めない取締役の範囲に関しては、中間試案において、執行役を兼ねている取締役および業務執行取締役に限らず、監査委員でないすべての取締役とするとの考え方や、監査委員でない取締役のうち社外取締役以外の取締役とする考え方もあるとされていた。「部会資料15」によれば、パブコメにおいて、この点については意見が分かれたものの、監査委員会による監査の実効性を損なうおそれがあることが明らかな範囲に限って閲覧または謄写を認めないこととする観点から、自らの不正行為に関する調査活動に妨害し、証拠を隠滅するなどして、監査委員会による監査の実効性を損なうおそれがあることが比較的明らかである執行役を兼ねている取締役および業務を執行した取締役を対象とすることを提案している。

 上記⑵の監査委員等の選定および解職手続に関して、パブコメにおいては賛成する意見が多数であったものの、監査委員を解職されまたは辞任した者の株主総会における意見陳述権(中間試案第3部第1の2⑵の注)については、監査役および監査等委員は株主総会で選任される一方で、監査委員の選定は株主総会ではなく取締役会の権限であることを踏まえ、「部会資料15」においては提案されていない。

 上記⑶の監査委員の補助者の設置に関して、パブコメにおいては、中間試案第3部第1の2の後注(①監査委員会の常勤補助者を設置しなければならない旨または②監査委員会が常勤補助者の設置の要否を決定することができる旨の規律を設けること)について、①の考え方に賛成する意見、常勤の監査補助者の設置の要否については、監査委員会の委員の自主性に委ねるべきであるなどとして、②の考え方に賛成する意見、内部統制の基本方針で決議される事項であり、法律での規定は不要であるとしていずれにも反対する意見があり、意見が分かれていた。「部会資料15」においては、監査委員会による監査の実効性を確保するという観点から、その要否の判断は監査委員会が行うべきであると思われるとして、監査補助者の設置の要否を監査委員会が判断することを提案している。

 

3 責任限定契約制度等の見直し

 責任限定契約制度等に関して、「部会資料15」では、概要表2の規律を設けることが提案された。

 

(表2)責任限定契約制度等の見直しに関する規律の概要

責任限定契約制度の見直しとして、次の⑴および⑵の規律を設けるものとすることで、どうか。併せて、責任限定契約制度および会社法425条または426条の株主総会の決議または定款の定めに基づく取締役等による責任の一部免除制度の見直しとして、次の⑶の規律を設けるものとすることについて、どのように考えるか。

⑴ 株式会社が責任限定契約を締結することができる相手方に業務執行取締役等(会社法2条15号イに規定する業務執行取締役等をいう。以下同じ。)である取締役および執行役を加える。

⑵ 株式会社と業務執行取締役等である取締役または執行役との利益が相反する状況にある場合においてその任務を怠った当該取締役または執行役の会社法423条1項の責任については、責任限定契約による責任の限定の対象外とする。

⑶ 業務執行取締役等である取締役または執行役については、会社法425条1項に規定する最低責任限度額の算出の基礎となる「職務執行の対価」としての「財産上の利益」(同項1号)および「新株予約権」(同項2号)について、当該取締役または執行役が会社法423条1項の責任を負う株式会社の親会社等(会社法2条4号の2に規定する親会社等をいう。以下同じ。)および当該親会社等の子会社等(同条3号の2に規定する子会社等をいう。以下同じ。)から受け、または受けるべきこれらの財産とする。

 

 上記⑴の業務執行役員に責任限定契約の締結を認めることに関して、パブコメにおいては、相対的に見ると、賛成する意見がやや多かったことを踏まえ、中間試案と同様の内容を提案している。なお、「部会資料15」では、個人である取締役に巨額の損害賠償責任を負わせることは社会全体として適切でなく、株主が望む場合には、取締役が負う損害賠償責任の額を一定の範囲に限定し、相対的にリスク負担能力のある株主が残りのリスクを負うことを禁止する理由はないという適切な責任の分担の観点を、制度趣旨の中核と整理している。

 上記⑵の利益相反状況における責任の適用除外に関して、パブコメにおいては、相対的に見ると、賛成する意見がやや多かったことを踏まえ、中間試案と同様の内容を提案している。なお、利益が相反する状況において業務執行役員が一定の行為をしなかったことが任務懈怠と評価される場合もあり得ることを踏まえて、「利益が相反する状況にあるときに行われた行為に基づく〔中略〕責任」という文言について、「利益が相反する状況にある場合においてその任務を怠った〔中略〕責任」と改められている。

 また、「部会資料15」では、「利益が相反する状況」がいかなる場合であるかについて、概要表3の考え方が示された上、議論がなされている。

 

(表3)「利益が相反する状況」の解釈に関する考え方の概要

考え方①

業務執行役員の主観に着目して、業務執行役員が自己または第三者の利益を現に優先したことによって生じた任務懈怠責任であれば利益相反責任となるという考え方

考え方②

業務執行役員にそのような主観的意図がなくとも、結果的に自己または(一定の関係性を有する)第三者の利益の下に株式会社に損害が生じ、これが任務懈怠に該当する場合(たとえば、支配株主による従属会社の買収において、業務執行役員に自己または支配株主の利益を優先する意図まではないものの、公正性を担保するための措置を欠いた点に任務懈怠が認められるとき)には、利益相反責任に該当するという考え方

 

4 事業報告等および有価証券報告書の開示の合理化

 事業報告等および有価証券報告書の開示の合理化に関して、概要表4の規律を設けることが提案された。パブコメにおいて、賛成する意見があった一方で反対する意見はなかったことから、中間試案と同様の内容を提案したものである。

 

(表4)事業報告等および有価証券報告書の開示の合理化に関する規律の概要

⑴ 金融商品取引法(以下「金商法」という。)24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社が電子提供措置開始日までに事業報告等(計算書類および事業報告ならびにこれらの附属明細書ならびに連結計算書類をいう。以下同じ。)の開示事項のすべてを記載した有価証券報告書を提出した場合には、事業報告等を作成することを要しない。

⑵ 会計監査人が⑴の有価証券報告書について金商法に基づく監査をした場合には、会社法に基づく会計監査人の監査をしたものとみなす。

(注) ⑴の見直しをする場合には、有価証券報告書のうちの事業報告等の開示事項に相当する部分について、事業報告等に関する会社法の規定(⑵の規定を除く。)を適用することを想定している。

 

 規律の対象となる株式会社に関して、中間試案では「上場会社」がその対象とされていたところ、パブコメにおいて、上場会社でなくとも、金商法24条1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社であれば開示の合理化が進められるべきであるとの意見がみられたことを踏まえ、中間試案から対象を拡げて、有価証券報告書を提出する株式会社を対象とすることを提案している。

 なお、上記⑴の規律については、中間試案のように任意的に適用する案に対し、第13回会議において日本公認会計士協会からは段階的にすべての上場会社に対し強制的に適用していくべきとの意見が示された。他方、この点については、パブコメにおいて、有価証券報告書を株主総会の3週間前に提出するのは多数の上場会社にとって開示業務の負担が大きいことから、電子提供措置開始日までに事業報告等の開示事項のすべてを記載した有価証券報告書を提出するか否かについては、上場会社の選択に委ねるべきであるとの意見もあったことを踏まえ、現時点において、すべての上場会社に⑴の規律を強制的に適用することは困難であるとして、中間試案と同様に、株式会社の選択に委ねる任意の制度として提案している。

 

5 次回以降の会議の見通し

 第18回会議の開催予定は、2026年9月30日である。

以 上

 



[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00341.html(2026年9月8日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)

[3] 会社法316条2項に規定する調査者制度の見直し、株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者の見直しに関する事項を指す。第14回会議の資料である「部会資料14」に含まれる内容であるが、第15回会議にて取り扱われたものと推察される。なお、「部会資料14」の内容については下記を参照されたい。

第14回会議
速報:https://code.shojihomu.jp/document/019eb97dbbf4de35a80c5350

執筆者

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    弁護士

    坂本佳隆

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2012年~2013年東京大学法科大学院非常勤講師。2016年米国University of Southern California (LL.M.)終了。2016年~2017年米国ロサンゼルスのReed Smith法律事務所勤務。2017年~2019年に法務省民事局へ出向し、令和元年改正会社法の企画・立案を担当。2019年カリフォルニア州弁護士登録。主に、M&A及び会社法関連業務を扱っている。

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    弁護士

    山田智希

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。2017年東京大学法学部卒業。文部科学省勤務を経て、2018年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2024年英国King's College London, University of London (LL.M.)。2025年英国弁護士(Solicitor, England and Wales)登録。2025年ライデン大学航空宇宙法研究所客員研究員(航空宇宙法)。コーポレートガバナンス・グローバルコンプライアンス、国内外のM&A・組織再編を専門に扱う。また、宇宙・航空・海洋分野を中心とする国際法・国際取引法関連、公共調達や行政紛争等の行政関連案件に積極的に取り組んでいるほか、交通・物流分野や教育分野をはじめ、インダストリーに特化した法務面のアドバイスにも従事している。

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    角田怜央

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。2022年東京大学法学部卒業。2024年弁護士登録(第一東京弁護士会)。株式報酬、M&A、スタートアップ支援等を中心に取り扱う。

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