CODE
CODE
CODE解説

「速報・詳解 会社法改正動向」第18回会議 速報 野村直弘/趙楠

2026/10/20野村直弘(弁護士)趙 楠(弁護士) アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(https://www.amt-law.com/)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 野 村 直 弘

弁護士 趙     楠

 

1 第18回会議の開催

 2026年9月30日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第18回会議が開催された。法務省のウェブサイトには、その議題等、議事概要および資料が掲載されている[1]。

 第18回会議では、主に、業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出の制限および株主による株主総会の招集請求権の行使要件の見直しについて、参考人から意見聴取がされた。また、「部会資料16」に基づき、会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた補充的な検討として、①実質株主確認制度と②株主提案権等に関する規律の見直しについて審議された。

 意見聴取の内容については第18回会議の詳解で取り上げることとし、本稿では、「部会資料16」に記載された検討事項を、主要なポイントに絞って解説する。

 

2 実質株主確認制度

⑴ 株式会社から実質株主を確認する制度

 株式会社から実質株主を確認する制度(以下「確認制度」という。)については、第15回会議[2]の議論を踏まえ、「部会資料16」で規律の案が修正された。具体的には、確認制度の中核的な趣旨を「株式会社と株主との間の建設的な対話の促進」に求めつつ、副次的な趣旨を「有事の場面における株式会社の支配に関する重要な情報の把握」に求めることとし、議決権の停止として表1の規律を設けることが提案された。

 

(表1)確認制度における議決権の停止に関する規律の案(の一部)[3]

(a)   仲介機関である基準日株主が行使できる権利が株主総会における議決権であり、上場会社が基準日株主に対し、当該株主総会が会社法297条1項、303条2項または305条1項の規定による請求により経営に重要な影響を与える事項として法務省令で定めるものが目的事項・議案とされたものであることを明らかにして確認請求をした場合において、故意または重大な過失により転送義務・情報提供義務に違反(当該違反に係る株式(以下「違反株式」という。)の数が発行済株式(自己株式を除く。)の総数の200分の1以上であるものに限る。)した者(以下「違反者」という。)があり、上場会社が違反者(違反株式の基準日株主でない場合には、違反者および違反株式の基準日株主)に対して議決権停止通知をした日から1か月を経過したときは、確認請求を受けた基準日株主は、当該株主総会で違反株式について議決権を有しない。

(b)   (a)の規定は、次のいずれかに該当する場合には適用しない。

① 違反者が転送義務・情報提供義務の違反を是正した日から3週間を経過した場合

② (a)の違反が違反者の指図権者を直近下位仲介機関と誤認したことに基づくものである場合

(c)   議決権停止通知またはこの規定による通知を受けた仲介機関は、当該通知に係る違反株式について当該仲介機関の直近下位仲介機関がある場合には、直ちにその旨を直近下位仲介機関に通知する。

(d)   議決権停止通知または(c)の規定による通知を受けた仲介機関は、当該通知に係る違反株式について当該仲介機関に対する指図権者がある場合には、直ちにその旨を当該指図権者に通知する。

 

 第15回会議では、確認制度の実効性を確保する観点から、議決権の停止を設けることに賛成する意見が多数あったが、その対象範囲については意見が分かれた。原則として実質株主はその素性を明らかにする必要はないと考える場合には、議決権の停止が許容されるのは、指図権者の情報が明らかにされない状況下において、少数の株主がイニシアティブをとって上場会社の経営に重要な影響を与える事項を付議する株主総会の場面(すなわち、重要な議題・議案に係る株主提案または臨時株主総会の招集請求がされた場面)に限定されると捉えることができる。表1の(a)は、このような考え方に基づき、議決権の停止の対象となる場面を限定したものである。また、違反株式が僅少である場合を除外する観点から、閾値が200分の1(0.5%)以上とされている。

 表1の(c)と(d)は、議決権が停止された場合には実質的には指図権者が不利益を被る可能性があることから、その手続保障として、議決権停止通知を受けた仲介機関に、その背後の下位仲介機関または指図権者に対して直ちに通知する義務を課すものである。

 なお、第15回会議では、実質株主(指図権者)による株主総会への代理出席および議決権の代理行使について、提案に賛成する意見が多数あった一方で、①指図権者の入場資格の確認や、②名義株主が議決権の不統一行使をする場合における、事前の議決権の行使と、指図権者に代理行使が委任された議決権の範囲との関係性について、株主総会の実務が混乱することを懸念する意見も多数あった。もっとも、「部会資料16」では、これらの懸念について、具体的な規律は設けず、現行法の解釈(特に会社法施行規則63条5号)によって対応することが提案されている。

 

⑵ 株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度

 株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度(以下「通知制度」という。)についても、第15回会議の議論を踏まえ、「部会資料16」で規律の案が修正され、通知義務の違反による議決権の停止に関し、表2の規律を設けることが提案された。

 

(表2)通知制度における議決権の停止に関する規律の案(の一部)[4]

(a)   故意または重大な過失により通知義務に違反して大量保有・変更報告書の不提出または重要事項の虚偽記載・不記載をした者(以下「違反者」という。)がある場合において、その違反に係る株券等を発行する上場会社が違反者に対して議決権停止通知をした日から1か月を経過したときは、違反者が保有する当該上場会社の株式(当該通知後に違反者が保有するに至ったものを含む。)(株主総会で議決権を行使できる者を定めるための基準日を定めた場合には、当該基準日に違反者が保有する株式とする。)は、議決権を有しない。

(b)   (a)の規定は、次のいずれかに該当する場合には適用しない。

ア (a)の違反の事実が発生した日から5年間を経過した場合

イ (a)の違反に係る大量保有・変更報告書の追完の日から1か月を経過した後最初に招集される株主総会の終結の時を経過した場合

 

 第15回会議では、事務過誤による違反やみなし共同保有者に帰責事由がある違反も生ずる可能性があることを踏まえて、議決権の停止の対象を限定するべきとの意見が複数あったことから、表2の(a)は、その対象を故意・重過失による違反に限定している。また、これに伴い、(従前の提案にあった)みなし共同保有者に関する事項に起因する違反を議決権の停止の対象外とする旨の規律が削除され、当該違反も、故意・重過失によるものであれば議決権の停止の対象とされた。

 また、追完により議決権の停止の効力が失われる時期について、従前の提案では、故意・重過失による違反の場合は追完後最初に招集される株主総会の終結の時の経過時とされていた。しかし、議決権停止通知から議決権の停止の効力が生ずるまでの期間が1か月であることを踏まえると、株主総会の1か月前以降に生じた通知義務に違反し、その後株主総会が招集されるまでに追完した場合には、議決権が停止されず、抑止力に欠けることから、表2の(b)イのとおり、追完から「1か月を経過した後」最初に招集される株主総会の終結の時の経過時に改められた。

 

3 株主提案権等に関する規律の見直し

⑴ 業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出の制限

 第16回会議[5]では、上場会社においては定款変更の形式による業務執行事項に関する株主提案をできないものとすることについて、取締役会設置会社における株主総会と取締役会との権限分配の趣旨や、業務執行事項が定款に定められた場合には機動的かつ柔軟な経営判断が困難になること等を理由として、これを支持する意見が多数あった一方で、規律を設けることに否定的な意見も多数あった。

「部会資料16」では、規律を設けるとした場合、その趣旨は、実際に業務執行に関する具体的な事項が定款に定められた場合に生ずる弊害を防止する点にあると整理することが相当であるとした上で、表3の【A案】と【B案】が提案された。

 

(表3)業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出の制限に関する規律の案[6]

【A案】

上場会社は、株主が定款変更議案を提出した場合において、当該議案が業務執行に関する事項であって、定款に定めることにより取締役または執行役(以下「取締役等」という。)の裁量を拘束し、株主の共同の利益を害するおそれが大きいものとして法務省令で定める事項についてのものであるときは、取締役会決議により、当該議案を株主総会で取り上げないことができる。この場合、上場会社は、株主総会参考書類に、当該議案の要領およびこれを取り上げなかった理由を記載する。

【B案】

上場会社(取締役の過半数が社外取締役であるものに限る。)は、株主が定款変更議案を提出した場合において、当該議案が当該上場会社で取締役会決議により業務執行の決定を取締役等に委任している事項についてのものであるときは、取締役会決議により、当該議案を株主総会で取り上げないことができる。この場合、上場会社は、株主総会参考書類に、当該議案の要領およびこれを取り上げなかった理由を記載する。

 

 【A案】は、株主による議案の提出自体を禁止するのではなく、上場会社が取締役会決議により当該議案を株主総会で取り上げないことができるものとし、取り上げなかった場合には、株主総会参考書類に当該議案の要領およびこれを取り上げなかった理由を記載させることにより、株主の利益の保護を図るものである。

 第16回会議では、【A案】の方向性に対し、個別の提案の取扱いをめぐる紛争を招くおそれが大きいとの指摘や、すでに一定の解釈論の蓄積がある概念に依拠することについての示唆があった。これを踏まえた【B案】は、取締役会が、一定の事項を除いて業務執行の決定を取締役等に委任することを認められており(会社法362条4項、399条の13第4項から第6項まで、416条4項)、現に委任している場合には、取締役会による監督の下で業務執行者に判断を委ねることが適切であるため、定款変更の形式により取締役会の判断自体を否定する権限を株主に与えるべきではないとの考え方に基づくものである。適用対象となる上場会社は、取締役の過半数が社外取締役であるものに限定されているが、このような会社であれば、取締役会の業務執行者からの独立性がその構成上一定程度担保され、株主提案を取り上げないことの必要性・相当性が業務執行者から独立した立場で検討されることにより、株主の利益が不当に害されることはないと期待できることによる。

 

⑵ 株主による株主総会の招集請求権の行使要件の見直し

 第16回会議では、株主による株主総会の招集請求権(会社法297条1項)の行使要件のうち、「100分の3」以上という議決権の保有割合の要件を「100分の5」以上に引き上げることについて、これに反対する意見もあった一方で、①この招集請求に応じて会社が株主総会を開催することは、株主提案に対応する場合に比べて経済的・手続的負担が大きく、濫用による影響が大きいことや、②諸外国の法制度とのイコールフッティングの観点等から、これを支持する意見が多数あった。そこで、「部会資料16」では、このように要件を引き上げることの是非が検討事項とされた。

 

4 次回以降の会議の見通し

 第19回会議は、2026年10月28日に開催される予定である。

以 上



[1] https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00342.html (2026年10月16日最終閲覧。以下、本稿で引用するウェブサイトについて同じ。)

[3] 第15回会議の「部会資料13」と同様の内容は省略している。また、文言は適宜簡略化している。

[4] 前掲注[3]に同じ。

[6] 文言は適宜簡略化している。

執筆者

  • 弁護士

    野村直弘

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。2013年東京大学法学部卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、人事・労務、紛争解決、サステナビリティ法務に関する業務を広く取り扱う。

  • 趙 楠の画像

    弁護士

    趙 楠

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。2023年東京大学法学部卒業。2026年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、コーポレート、M&Aを中心として、知的財産、海外法務に関する業務を広く取り扱う。

  • https://www.amt-law.com/

    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

    <事務所概要>
    アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。

    <連絡先>
    〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

     

    * 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用